名南経営 presents ─vol.1─
2016年1月のマイナンバー制度の開始が、いよいよ近づいてきました。2015年10月以降には、住民票をもつ国民1人ひとりに、10月5日時点の住民票所在地へ紙製のマイナンバー通知カードが簡易書留によって郵送されることになっています。
利用分野が拡がるマイナンバー
そんななか、先日、マイナンバーの運用の根拠となる法律が改正されたことは記憶に新しいのではないかと思います。現時点では、マイナンバー制度は「税分野」「社会保障分野」「災害対策分野」の3つの分野で運用されることになっていますが、この改正マイナンバー法によってそれが拡大され、「金融」や「医療」の分野でも利用されることになります。具体的な改正点を以下にご説明しましょう。
まず、「金融」の分野では、2018年1月より、任意で預金口座へのマイナンバーの紐づけが行われます。国が、複数の金融機関の口座を横断して金融資産を把握することができるようになることから、脱税や生活保護の不正受給の防止等といった点で有効と考えられています。
もっとも、金融資産がガラス張りになること対して抵抗感を持つ人も少なくないのが現状で、果たして、どの程度の数の国民がマイナンバーを任意で追記してくれるのかという疑問も生じています。そのため、マイナンバーに紐づけられた金融機関の口座が少なければ、2021年以降に義務化にすることも検討されています。
また、「医療」の分野では2つの管理が行なわれます。2016年1月以降に行われる、いわゆるメタボ検診といわれる特定検診の履歴と、2017年から行われる予防接種の履歴のマイナンバーへの紐づけです。このような管理を行なうことによって、引越しや転職をした際に、それまでの情報が引越し先の自治体に引き継がれるため、自治体から無駄な案内を行なう必要がなくなると同時に、不要な医療費等を削減できるものと考えられています。
さらに、将来に向けて、病気等の履歴を把握できるようにすれば、不必要な投薬や、重複受診に伴う二重検査等を防止することができ、さらなる医療費の削減に貢献するものと期待されています。
なお、政府は2014年5月に発表したIT総合戦略本部の分科会の資料のなかで、戸籍事務や自動車登録等にもマイナンバーの利用を拡大していく方向性を示しています。これにより生活面で様々な手続きがワンストップ化され、利便性が高まることが期待されていますが、一方で、先日の日本年金機構における情報漏えい問題もあることから、慎重に議論が行われています。
(次回は9月28日・月曜日に配信予定)
【執筆者プロフィール】
社会保険労務士法人 名南経営
社会保険労務士 服部英治
1972年岐阜県出身。大手社会保険労務士事務所を経て1999年に入社。名南コンサルティングネットワークのトップコンサルタントの一人として、全国各地でクライアント企業の労務コンプライアンス支援(労務監査)、IPO支援、人事制度改定支援、各種人事労務相談等に応じている。医療福祉業界や運送業界の人事労務に精通、他にも海外人事労務等を得意としている。