日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2024/12/24 10:31
新発田市天王に市島邸がある。越後を代表する豪農の1つ市島家の邸宅跡だ。新発田駅から羽越本線に乗り換えて2駅、月岡駅が最寄り駅。月岡温泉で知られる同駅だが、電車は2時間に1本ほどしかないローカル線だ。実は今夏に福島潟から1時間以上歩いて訪れたのだが残念ながら休みで、月岡駅で2時間近く次の電車を待った。
そこで、今回はしっかりと開いていることを確かめて再訪。市島邸は月岡駅から歩いて10分ほどのところにある。市島家は明治時代を代表する千町歩地主の一つで、そのルーツは丹波国氷上郡市島村(現在の兵庫県丹波市)。
祖弥惣右衛門は溝口氏に仕え、慶長3年(1598)溝口氏の新発田入封に従って五十公野村(現在の新発田市)に移り住んだのに始まる。やがて、南山8家といわれる分家とともに、水原や新発田で大きく発展した。
一族には早稲田大学初代図書館長だった市島謙吉がいる他、縁戚関係にあった吉田東伍の「大日本地名辞書」の編纂に協力したことでも知られる。こうした郷里の文化人の偉業をバックアップしたのも、明治の名家の懐の深さだ。
また、新潟県文化財に指定されている邸宅そのものも立派だが、邸内の資料館にさりげなく谷文晁や酒井抱一の掛軸が飾られているのが本物の豪農であることを感じさせられる。名家や旧家は財産を築いていればいい、というものではない。地元に還元してこその名家である。