一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第82回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「SNSコメント」について。
コメントで信頼を失っていませんか?
SNSにおけるコメント欄は、フォロワーとのコミュニケーションの場として極めて重要です。コメント欄で楽しく快適にやり取りすることによって、書き手の人柄や人間性が伝わり、相手との関係性も深まっていきます。
一方、コメント欄は、最新の注意を払わなければいけない場でもあります。しばしば見かけるのが、投稿の文章とコメントの文章が別人に見える、というケース。通常の投稿ではすばらしいことを書いている人が、コメント欄では愚痴や不平不満だらけだったり、特定の誰かを攻撃していたり、マウンティングを取ったり……。
事実、コメントを読んだときに「えっ、これって本当に◯◯さんのコメント?」「えっ、こんな人だったの?」とガッカリしてしまうようなこともあります。本人は、コメントを届ける相手と1対1でやり取りしている感覚があるため、つい気が緩んでしまうのかもしれません。
コメントで失敗する人に欠けているもの
以前、「今日の仕事はすべて完了!」という日記的な投稿をしていた人が、そのコメント欄で「打ち合わせ相手の言語化がヘタすぎてホント疲れた」と書いていました。
万が一、このコメントを打ち合わせ相手が見たとしたら、どう思うでしょう? 打ち合わせ相手だけでなく、それ以外の人も「この人は表と裏がある人だ」と思うかもしれません。コメント欄で失敗している人は、「自分のコメントが不特定多数の人に見られるかもしれない」という想像力に欠けているのです。
実際に、コメント欄は大勢の人に見られています。そして、コメント欄にこそ、その人の素性が表れる、とも言えます。ある程度、緊張感をもって書く投稿欄と違い、一見「閉ざされた空間」に見えるコメント欄は、緊張が緩みやすい場でもあります。それゆえ、細心の注意を払わなければいけないのです。
難癖や言い掛かりは深追いしない
自身がした投稿に対し、反論や嫌味、皮肉、余計なお世話、罵詈雑言……など、ネガティブなコメントがつき、感情がゆさぶられたときも注意が必要です。ついカっとなって、高ぶった感情のまま返信してしまいがちだからです。
たとえば、相手のコメントにカチンときて、「売り言葉に買い言葉」で返してしまう。保身のための言い訳や言い逃れの言葉を書いてしまう。特定の誰かを陥れるようなことを書いてしまう……こうしたやり取りを公開してしまうことで、フォロワーからの信用を一瞬で失ってしまうこともあります。
妙なコメントが入ったときは、なにはともあれ「即レス禁止!」です。すぐに返信せず、冷静になってから返信文を書きましょう。返信する際も、感情的な言葉が強くならないようセルフマネジメントすることが大切です。大人の所作として、原則“軽やかに流す”ことをおすすめします。
「多くの人に見られている」という意識
もちろん、本当に悪意のあるコメントには返信する必要はありません。悪意のある相手の場合、あなたが感情的に反応することを楽しもうとしている可能性もあります。その誘いに乗ってはいけません。悪意に対し悪意で返せば、同じ穴のムジナになってしまいます。
(見ず知らずの人を含め)他人の投稿のコメント欄も、自分の投稿のコメント欄同様に危険に満ちています。「自分の知り合いは見ていないだろう」と思ってしまう気持ちもわかりますが、その考えは脇が甘すぎます。
誰もがアクセスできるSNSである限り、どこの(誰の)コメント欄かは関係ありません。コメントを書くときは、いつでも頭の片隅に、「このやり取りは多くの人に見られている」という意識をもっておきましょう。
山口 拓朗(やまぐち たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。