日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2024/10/23 10:54
三陸に出かけた帰り、時間があったので一関市の猊鼻渓によってみた。「猊鼻渓」と書いて「げいびけい」と読む。かなりの難読地名である。近くには空飛ぶ団子で有名な「厳美渓」(げんびけい)もあり紛らわしい。
そもそも、「猊」という漢字はあまり見かけない。高僧に対する敬称として「猊下」と使うくらいだ(日常生活では使わない)。漢和辞典によると、「猊」とは「獅子」のこととある。
猊鼻渓の公式サイトによると、猊鼻渓と名付けられたのは比較的新しく、明治43年のことであるという。この地を観光地として開発した地元有志らによるもので、その中心となったのが郡議をつとめた地元の政治家佐藤猊巌(げいがん、本名は衡)。江戸時代には絵図にも書かれなかったというこの秘境を、猊巌は父洞潭とともに私財を投じて観光地開拓に努め、東の耶馬渓といわれるまでに発展させた。
猊鼻渓は舟下りで有名。JR大船渡線の猊鼻渓駅から歩いて5分ほどの所に乗り場があり、ここから90分かけて往復する。行きは上りのため、船頭が竿を使ってすべて人力で漕いで三好ヶ丘の船着き場につけてくれる。
この三好ヶ丘の対岸には大きく突き出た「獅子ヶ鼻」があり、これに因んで渓谷全体が「猊鼻渓」と名付けられた。
帰りは船頭の唄う「げいび追分」を聞きながら、巨岩の間をゆっくりと下っていく。日常の喧騒から解き放たれた癒しの時間である。