一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第76回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「断りの表現」について。
「断る理由」を説明し、理解を求めよう
ビジネスシーンでは、断りのメールを書く機会も多いもの。誘いを断ったり、受けた依頼を辞退したりする際には、相手に不快感を与えないよう、文面を工夫しなければいけません。以下は、依頼を受けられない旨を伝える「断りメール」の文面です。
「断りメール」の例文
このたびは「男性用日傘HADA-MOTE」の製造についてお問い合わせいただき、誠にありがとうございます。
社内で検討を重ねた結果、誠に残念ながら、今回のご依頼を辞退させていただくことになりました。⬅️ ①
現在、ゴールデンウィーク前で工場がフル稼働しており、ご提示いただいた納期に間に合わせるための製造機および人員の確保が困難であるためです。⬅️ ②
勝手な事情で申し訳ございませんが、ご理解いただけますと幸いです。
またの機会にお声がけいただけますと嬉しく存じます。⬅️ ③
メールでのご連絡となり恐縮ですが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
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断る際、相手との関係性にヒビを入れてしまってはいけません。今後も相手と良好な関係を継続するためには、「依頼(お願い)を受けられない残念さ」や「相手への配慮」が伝わる表現を心がけましょう。
①結論(断り)を伝える
依頼や相談をいただいたことへのお礼を伝えたのちに、「断る」という結論を伝えます。断りフレーズの前に「誠に残念ながら」「大変ありがたいお話なのですが」などのクッション言葉を入れると角が立ちにくくなります。
②断る理由を説明する
相手に納得してもらうには、「なぜ断るのか?」――その理由を明確に伝える必要があります。理由があいまいだと、「依頼の仕方が悪かったのかも?」「何か隠しているのでは?」のように、相手に余計な不安や心理的な負担を与えてしまう恐れがあります。
③断ることへの理解を求める
「ご理解(ご了承)いただけますと幸いです」などと理解を求め、「またの機会に〜」と次の機会につながる言葉を添えましょう。
相手に配慮し、関係性をこわさない断り方を
「断り」のメールは、送る側にとっても受け取る側にとっても気をつかうものです。以下は「断りメール」に使えるフレーズです。TPOをわきまえながら、使い分けられるようにしておきましょう。
【基本的な断りフレーズ】
・お断りいたします。
・ご遠慮申し上げます。
・ご辞退いたしたく存じます。
・遠慮させていただきます。
・○○が難しい状況です。
・今回は見送らせていただきます。
・今回は辞退させていただきます。
・今回は見合わせることになりました。
・お気持ちだけ頂戴いたします。
・お断りせざるを得ない状況です。
・ご要望(ご期待)には添いかねます。
・ご要望(ご期待)にはお応えすることができません。
・お引き受けいたしかねます。
・お応えすることができません。
・お受けいたしかねる状況です。
・対応いたしかねます。
・お申し出はお受けいたしかねます。
【力不足を理由に断るフレーズ】
・力不足で申し訳ございません。
・お力になれず申し訳ございません。
・ご期待に添えず申し訳ございません。
・とても私には力が及びません。
・私にはまだ荷が重すぎます。
・私の一存では決めかねます。
【理解を求めるフレーズ】
・(何卒)事情をご賢察のうえ、ご理解いただければと存じます。
・(何卒)事情をお察しいただき、ご容赦のほどお願い申し上げます。
・あしからずご了承ください。
断りメールの書き方は、ビジネスのみならず、プライベートでのコミュニケーションにも、その考え方と書き方が応用可能です。相手への敬意を示しつつ、自社(あるいは自身)の事情を明確に伝えることで、相手に誠意や謝意を伝えることができます。
相手にとって気持ちのいい「断りメール」を書ける人は、仕事・プライベートを問わず、周囲の人たちと良好な人間関係を保ち続けられる人です。ポイントを外さないよう、細心の注意を払いましょう。
山口 拓朗(やまぐち たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。