人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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九品仏浄真寺

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2024/05/14 10:34

東急大井町線に九品仏という駅がある。これで「くほんぶつ」と読む難読駅の1つだ。

駅名の由来は、駅の北側にある浄真寺というお寺。浄真寺には本堂の対面に3つの阿弥陀堂があり、中央が「上品堂」、その両側を「中品堂」「下品堂」という。そして、それぞれの堂に3体ずつ、計9体の印相の異なる阿弥陀如来像が安置されていることから、通称「九品仏」と呼ばれている。

九品仏駅はこの浄真寺の最寄り駅で、駅のすぐ北側から浄真寺に向かって参道が伸びている。総門をくぐって正面に見えるのが開山堂。その薬医門の前を左に折れると立派な山門(仁王門)がみえる。門に続く道の両側には楓が植えられ、新緑のこの時期でも素晴らしい景色だった。これが秋に紅葉すると絶景になるに違いない。

山門をくぐると右側に本殿(龍護殿)があり、その向こう側には3つの阿弥陀堂が並んでいた。

ところでこの浄真寺、もう1つの顔がある。それは奥沢城の城跡である。廃城となった城が江戸時代に寺院になることは珍しくはなく、ここには世田谷を本拠とした吉良氏の城があった。世田谷吉良氏は三河吉良氏の一族で戦国時代は北条氏に従い、吉良頼康が世田谷城の出城として奥沢に城を築いて家臣の大平氏に守らせていた。

しかし、秀吉の小田原攻めで北条氏が滅ぶと奥沢城も廃城となる。そして、寛文5年(1675)にこの地の名主七左衛門が寺地として貰い受け、延宝6年(1678)に珂碩上人が浄真寺を開山した。

次は紅葉の美しいであろう、秋に訪れたい。

 

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