一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第52回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、文章の読み書きがスムーズになる「学習言語」について。
「生活言語」と「学習言語」の違いとは?
言葉には、大きく分けて、日常生活で使う言葉「生活言語」と、学習するときに使う言葉「学習言語」があります。
たとえば、作成、適切、比例、平均、評価、関連、展開、特色、果たす、対する、定める、値する、応ずる、基づく、およそ、さまざま――これらの言葉は、ふだんの生活で見聞きする機会はあまり多くありません。一方で、本や資料、雑誌、教科書、参考書、ニュース記事などではよく見かけます。つまりは「学習言語」です。学習言語を通して、わたしたちは知識や情報をインプットしています。
たとえば、あなたがいま読んでいるこの記事もそう。学習言語に慣れ親しんでいる人ほど、サクサクと読み進めながら、内容を理解していきます。片や、学習言語に慣れ親しんでいない人は理解に手間取るほか、なんとか読み終えたとしても、浅い理解やズレた理解で終わってしまっている恐れがあります。
「文字を読むのが苦手です」という人の中には、そもそも学習言語への接触回数が少ないという人も多いです。知っている学習言語が少なければ、当然、文章を読み書きするときに苦戦を強いられます。「読む」と「書く」、どちらにも欠かせないのが学習言語なのです。
「学習言語」の数を増やすには?
では、学習言語をより多く習得するには、どうすればいいのでしょうか? その答えは「ふだんから積極的に学習言語に接する機会を増やすこと」です。
中には、「文章ならスマホでよく読んでいるから大丈夫です!」という人もいるかもしれません。しかし、その文章は友達とやり取りしているチャットではありませんか? あるいは、友達がSNSに投稿した日記や雑記ではありませんか? もしそうだとしたら、残念ながら、学習言語の習得効果はさほど期待できません。なぜなら、それらのほとんどが生活言語で書かれたものだからです。
一方、情報を正確に伝えようと腐心して書かれた説明文や解説文、論文、リポート、記事、書籍など、情報提供型の文章の場合、そこには多くの学習言語が使われています。知らなかった学習言語を少しずつ増やしていくことによって、文章を読み解く能力はもちろん、文章を書く能力も高まっていきます(より多くの学習言語を使えるようになるため)。
ビジネスパーソンであれば、仕事で使う報告書、提案書、議事録、案内文、広報文、メール――などを書く際に、必ず学習言語が必要となります。書く段になってから「学習言語を使おう」と気合を入れたところでうまくはいきません。そもそも知らない学習言語を使うことはできませんし、「なんとなく」の感覚で使えば、不適切な使い方をしてしまうおそれもあります。
学習言語に触れる機会を増やすことによって、文章を読み解くスピードが速まり、理解の深度も増します。それは、取りも直さず、自身の情報量や知識量を増やすことでもあります。それらの情報や知識は、その先に文章を書く際の“素材”としても重宝するでしょう。学習言語を増やすことで得られるメリットは、わかりやすいものからそうでないものまで多種多様。とりわけ、文章を書く能力は確実にアップします。ふだんから能動的に学習言語に触れる意識を持ちましょう。
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