人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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豊島将之九段の「豊島」の読み方

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2021/11/22 11:55

(画像は日本将棋連盟公式サイトよりキャプチャ)

11月13日、将棋の竜王戦で藤井聡太王位が叡王戦に続いて豊島将之を破り、史上最年少の4冠となった。豊島九段は21日の「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」で藤井四冠を降して一矢を報い、2人の戦いはこれからも長く続いていくだろう。

さてこの豊島九段、「とよしま・まさゆき」と読む。「豊(とよ)」に「島(しま)」なのでごく普通の読み方なのだが、東京だと「おや?」と思ってしまう人も多い。というのも、東京・池袋のある豊島区は「としま」と読むからだ。豊島区は古代律令制での武蔵国豊島郡に由来する由緒あるもの。そして、室町時代に武蔵南部に勢力を持っていた豊島氏も、豊島郡を本拠としたため「としま」氏といった。

それでは、現在の名字ではどうかというと、圧倒的に「とよしま」と読み、「としま」と読むのは5%以下。「としま」さんは豊島郡のあった東京都で最も多いが、それでも1割強ほどで、1%に満たない県も多い。

「豊島」は古くは「てしま」と読むことも多かった。大阪府北部にある豊能郡は明治29年に豊島郡と能勢郡が合併してできた郡で、この豊島郡は「てしま」と読んだ。瀬戸内海の小豆島の西側にある豊島は、現在でも「てしま」と読む。

名字で「てしま」と読むことはほとんどないが、「てしま」→「としま」→「とよしま」と変化していったのだろう。

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