空前の健康ブームを生み出した医学博士・石原結實(ゆうみ)氏のもとで幼いころから徹底して免疫力を高める生活をおくってきた医師・石原新菜(にいな)さん。その経験から、病気に負けない体をつくるには「7つのコツ」があるといいます。「温めドクター」「健康ソムリエ」として活躍する医師が実践する“免疫”を高める生活術=丈夫な体のつくりかたをご紹介します。

※本稿は『病気にならない体をつくる こども免疫教室(石原新菜 著)を一部抜粋・再編集しています。

病気になるか、ならないかは免疫しだい!

「免疫(めんえき)」とは、細菌やウイルスなどが体内に入り込んだときに、それらを攻撃してやっつける、私たちの体に備わっている「体を守るシステム」です。

病気をもたらす細菌やウイルスが体内に入っても、すべての人に症状が出るわけではありません。口の中や空気の通り道である気道は、やすやすと病原菌が侵入できないようなつくりになっています。もし、ここをくぐり抜けたとしても、体内の免疫システムが正常に働けば、なんの症状も出ません。

ところが、病原菌の勢いが免疫システムよりも強い場合は、発熱、セキ、鼻水、だるさ、関節の痛みなど、さまざまな症状が出てきます。そして、体内での病原菌の増殖が続くと、症状はどんどんひどくなり、最悪の場合は命を失うことも……。

では、症状が出ない人、感染しても軽い人、ひどくなってしまう人、その違いはどこにあるのでしょうか。

それは、その人の免疫システムと侵入した病原菌との力関係で決まります。免疫システムの力が強ければ、病原菌が入ってきてもおさえ込むことができますが、弱まっていると発熱や下痢などの症状が出てきます。

このほか、次のような症状にひとつでも思い当たる方は要注意。あなたの体を守る免疫システムの働きが悪くなっています。

〔あなたの体調をチェックしてみよう!〕
□カゼをひきやすく、ひいたら長引く
□熟睡できない、眠っても疲れがとれない
□口内炎がたびたびできる
□肌にブツブツが出たり、肌あれがひどい
□すり傷や切り傷がなかなか治らない
□気分が沈みがちで、心から笑えない
□ゲームなどが好きで、あまり体を動かさない
□下痢や便秘になりやすい
□体温が36.5度未満
□冷えていると感じる
 

「冷え」から始まる免疫の低下

では、免疫システムを正常に機能させるためには、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

免疫を低下させる要因はいろいろありますが、実はそのほとんどが「生活習慣」によるものです。たとえば、免疫細胞は、基本的に年をとるほど正常に働くものが減っていきます。老化による体の機能の低下は自然なことであり、避けることはできません。

ただ、免疫を低下させる要因には、気をつければ避けられるものがあります。ここでは、健康のため、いつまでも免疫を強く保つためにおさえておきたい大事なことを「7つ」にしぼってご紹介します。

①冷え

免疫の低下に直結するのが「冷え」です。なぜなら、体温が低いと免疫細胞の働きが弱くなって、病原菌を攻撃する力が落ちてしまうからです。

免疫細胞と体温との関係については、ちゃんとした研究・報告があります。ウイルスに感染した細胞を攻撃するNK細胞は、体温が36.5度以上になると活発に働きます。また、異物や病原菌を食べるマクロファージも体温が高いほど活発に働くことがわかっています。

そこで、おすすめしたいのが「寝るときの腹巻き」です。冷えやすい人は1日中、暑がりの人も寝ている間は腹巻きをしましょう。これは冬だけでなく夏もです。

②食生活の乱れ

自分の体に合った、体が必要としている食べ物は免疫を高め、丈夫な体をつくる強力なサポートになります。その一方で、体に合っていないものを食べていると、ぶくぶく太ったり、冷えを招いたり、血液が汚れたりと、免疫を低下させる大きな要因となります。また、野菜不足だったり、肉ばかり好んで食べたりしていると腸内細菌のバランスが悪くなってしまいます。

③肥満・やせすぎ

太りすぎていても、やせすぎていても、免疫力の低下につながります。適度な体重の目安は、身長と体重から計算するBMIが18.5~25の範囲。BMIをチェックして適度な体重を維持することが大切です。
  BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

④睡眠不足

睡眠不足が続くと免疫力が低下するといわれます。睡眠時間とカゼのひきやすさの関係を調べた米国医師会の論文によると、平均睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上の人と比べてカゼの発症率が約3倍だったそうです。質のよい睡眠を7~8時間以上とるよう心がけましょう。

⑤ストレス

過度なストレスが続いて緊張状態が長引くと、免疫システムの異常を招きます。意識して心身がリラックスする時間をつくるようにしましょう。

⑥腸内環境の悪化

免疫細胞の7~8割が腸にあって、「腸内環境」がいいと免疫細胞の働きが活発になり、悪いと低下することがわかっています。腸内環境の善し悪しを決めるのは、腸内にすみついている腸内細菌の種類です。腸内環境をよくするものを食べましょう。

たとえば、豆腐やキムチなど発酵食品が善玉菌を増やすことはよく知られていますが、根菜や海藻など食物繊維が豊富な食べ物や、トマトやパプリカなど抗酸化作用の強い野菜などもおすすめです。そして、食べすぎないよう「腹八分目」にすること、「よく噛んで、ゆっくり食べる」ことを心がけましょう。

⑦年齢を重ねる(加齢)

体内の細胞は一定の期間を過ぎると自然に死ぬよう設定されています。古い細胞の遺伝子をコピーして新しい細胞がつくられるのですが、コピーを繰り返すうちに遺伝子の情報にエラーが生じ、異常な細胞がつくられることになります。

年齢を重ねるほどエラーが生じやすくなり、老化が進んで免疫も低下します。老化や免疫が低下するスピードは、生活習慣で変わります。運動や入浴で体を温めるなど、免疫を高める生活を心がけましょう。

免疫システムは、いきなり強くなったり弱くなったりすることはありません。日々の生活の積み重ねが大切ですが、免疫システムを維持するコツは、どれもむずかしいことではなく、誰でも、いつでもできることばかりです。

『病気にならない体をつくる こども免疫教室ではもう少し詳しい方法をご紹介していますので、ぜひ試してみてください。カゼをひきにくくなった、疲れにくくなった、イライラしなくなった、勉強に集中できるなど、いい効果を実感できるはずです。


著者プロフィール:石原 新菜(いしはら にいな)

1980年長崎市生まれ。内科医。健康ソムリエ講師。幼少期をスイスで過ごし、帰国後は伊豆の緑豊かな環境に育つ。医学生の頃から自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實と共にメキシコのゲルソン病院、ミュンヘン市民病院の自然療法科、英国のブリストル・キャンサー・ヘルプセンターなどを視察し、自然医学の基礎を養う。現在は、父の経営するクリニックで漢方薬処方を中心とする診療を行うかたわら、テレビ・ラジオへの出演や、執筆、講演活動なども積極的に行い、「腹巻」や「生姜」などによる美容と健康増進の効果を広めることに尽力している。また、2人の娘を育てる女性としての視点からアドバイスにも定評がある。
著書に、13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸しショウガ健康法』(アスコム)のほか『やせる、不調が消える 読む冷えとり』(主婦の友社)『体を温める漢方で不調を治す』『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)など。
【オフィシャルサイト】https://www.ninaishihara.com/