「思うような結果が出せなくて辛い」「自分には向いていない気がする」——なにごとも数字で結果が出てしまう営業職。まるで偏差値のように成績を比較され、上司から厳しい言葉が飛んでくることも……。別に手を抜いているわけじゃない。一生懸命やっているのに、自分だけが“売れない”のはなぜなのか。158万人が学んだオンライン講座「営業サプリ」の総合監修を務める大塚寿氏が、あなたの心が軽くなる処方箋を提示する。
※本稿は『<営業サプリ式>大塚寿の「売れる営業力」養成講座』(大塚寿・著)を再編集しています。
あなたは本当に営業に向いていないのか
悩めるあなたにズバリ言いましょう。営業に向き不向きはありません。もちろん、ご自分を「営業に向いている」と思うなら、それはよいことですので、前向きにとらえて経験を重ねてください。問題は「向いていない」と思い込んでいる人です。
とかく「営業には外交的な性格が向いていて、内向的な人は向いていない」と考えられがちです。「他人とのコミュニケーションが苦手なので営業に向いていない」というのも、至極まっとうな理由のように思えますが、営業の場合は違います。「向き不向き」を決めるのは、営業パーソン自身や上司ではなく、むしろ「お客様」のほうなのです。
元気で明るくハキハキした人のほうが営業向きに思えるかもしれませんが、そんな表面的なことではなく、「技術のわかる人を寄こしてくれ!」とか「もっと気の利く営業はいないのか!」と不満を持っているお客様は山ほどいます。
「調子がいいだけで、フットワークが悪い!」「営業じゃ、埒(らち)が明かないので、直に設計の人を寄こして!」という本音がいかに多いことか。正直、営業に技術知識を覚えさせるより、技術者に営業をさせたほうが早いと判断する企業もあるほどです。
必ず自分に合った「営業スタイル」がある
さて、そんななかで私が共有したいのは、営業に向き不向きはなく、必ず自分に合った「営業スタイル」があるという事実です。
技術出身者やSE出身者は、その技術知識や経験が営業でも大きな武器になりますし、現場出身者も現場のことに精通しているので、お客様から見ると、「1をいえば10を知ってくれる、かゆい所に手が届く営業パーソン」です。
自分に足りないところを嘆く前にまず、自身が担当するお客様が求める営業パーソン像を描いてみましょう。自分のキャラやスキルや経験などで重なるところがあれば、そこを営業スタイルにするのです。
重なる部分がなくても心配は無用です。あくまでも営業スタイルですから、素のままの自分である必要はなく、他のキャラになりきる「ペルソナメソッド※」を用いてもいいですし、お客様の期待に応えられる動きをしているだけで、営業スタイルは育ってくるものです。
※ペルソナメソッド=「キレ味のいい営業パーソン」など理想の役柄(人物像)をイメージし、表情や言葉づかい、声の大きさなどを自分なりに演出して、相手の反応を増幅させる手法。
そもそも営業というのは、「方法をいくつ知っているか」で成果が決まってしまうものなので、ここまで読み進めたあなたは、すでにその方法の1つを手に入れつつあるわけです。それを実践するだけで成果は出ますので、私の主張が正しいことを、ぜひ証明してみてください。
お客様になりきって考えてみる
営業の本質というのは、いうなれば、
1.相手の期待を知る
2.相手の期待に応える
3.相手の期待に応えきる
4.相手の期待を超える
という一連のプロセスです。
そして、価格競争力や品質に優る競合他社に勝つためには、いかに相手の期待に応えきれるか、応えることができれば、期待を超えるレベルかどうかが勝負どころとなります。
その際に武器となるのが「感情移入+方法」です。この2つが「売れる営業の本質」といっていいでしょう。
まずは「感情移入」から。これは「顧客に感情移入する」ということです。私がかつてリクルートに入社して営業の仕事を始めた時に、多くの先輩たちが口々に教えてくれたことでもあります。もちろん、最初から「ピン!」ときたわけではなく、「ん? 感情移入って……」と戸惑った時期もありますが、何となく意味していることはわかりました。
「ピン!」ときたのは、何十社、何百社と受注を重ね、たとえ価格が高くても、品質に優る競合であっても、勝てるようになってからのこと。顧客に感情移入することによって、顧客以上に顧客が抱える課題や原因が見えてきたり、問題解決の糸口がつかめるようになったりすることを実感しました。
「お客様の立場になって考える」より「お客様になりきって考える」ほうが強いのです。
そもそも、お客様と私たち営業パーソンの間には、コミュニケーションしか存在しません。コミュニケーションは「思い」の発信と受信でできているわけですから、そこに感情移入が加われば、お客様と通じ合うもの、響き合うものが生まれ、その延長線上に「受注」があるのです。
「正しい方法」を知っている強さ
次に「方法」ですが、スポーツや楽器の演奏と同じように、営業のすべてのプロセスには「正しい方法」があります。
ゴルフやテニスに正しいフォームやその場に応じた打ち方があるように、営業にも正しい対処の「しかた」があるのです。その方法を知っているか、指導されているか、それに気づいているか、あれこれ試行錯誤してそこにたどり着いたのか……。こうした経験が営業力の差になっているに過ぎません。要は、その売れる方法を知っているか、知らないかだけの違いだったのです。
営業力というのは、ほとんどがコミュニケーション上にあるので、方法さえ知ってしまえば、再現性が高く誰でもできるようになるものです。ですので、あなたも新しい方法に出会ったら、必ず試してみてください。その際、成果があったかどうかの前に、まずは「手応え」を意識することが大切です。
手応えも成果もなかったら、全否定するのではなく、微修正して再実行を繰り返しましょう。その過程で、自身の営業にフィットさせていくことができるので、手応えがあったら、それを取り入れ、手応えが感じられなかったら微修正を繰り返して、営業力を高めていきましょう。
あなたが、近い将来、売れる営業パーソンになる日を楽しみにしています。そして、その方法を後進と共有することも忘れないでください。あなたの営業の成功を願ってやみません。