『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

誤解をまねく文章は「前提の共有」をしていない!

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2021/06/09 15:31

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第40回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、話の「前提」を共有する重要さについて。

仕事で一番最初にすべきは「前提の共有」!

この連載の一覧はこちら

メールを含むビジネス文章でたびたび起る誤解。その原因のひとつが「前提」の省略です。仕事をするうえで物事の前提を共有しておくことは重要です。

たとえば、人材育成をする際に「即戦力を育てる」のと「長期的な戦力を育てる」のとでは、作成するカリキュラムは大きく変化するはずです。そういった前提が、先々の判断や行動を決めるのです。

仕事で文章を書くときに前提の認識がズレると、成果達成しにくくなるほか、思わぬミスやトラブルを引き起こしかねません。コミュニケーションにおいて前提の共有は必須なのです。

以下は、仕事のプロジェクトを進める前に共有するべきおもな前提です。

  • このプロジェクトの目的・目標は?
  • このプロジェクトのルールや手順は?
  • このプロジェクトの予算・期限は?

こういった前提を省いてしまう原因としては“思い込み”があります。つまり「そんなこと(前提)、わざわざ言わなくてもわかっているだろう」と、書き手が勝手に判断してしまうのです。これでは誤解を招くリスクが高まるのも当然です。

前提が変われば、仕事の成否も変わる!?

文章を書くときには、そのつど、文章を読む人の前提認識レベルを見極める必要があります。少しでも「相手は前提を認識していないかも?」と感じたら、必要な説明を省いてはいけません。

【原文】
ご報告します。今回のネット販売会ですが、昨年よりアクセス数も多く、2日間で1,500個を販売しました

【修正文】
ご報告します。今回のネット販売会ですが、昨年よりアクセス数も多く、2日間で1,500名を販売しました。一方で、全販売数の割7が商品Bで、主力の商品Aは3割(450個)にとどまりました。目標に掲げていた「商品Aの700個販売」は達成できませんでした。

このネット販売会の最大の目的は「商品Aの700個販売」でした。原文では、この重要な前提に触れていません。書いた本人が前提を理解していないのか、あるいは、前提を書き忘れたのか。どちらなのかはわかりませんが、いずれにしても、これでは相手に「今回のネット販売会=成功した」と誤解を与えかねません。

一方の修正文は、前提を正しく理解しており、アクセス数と購入者数は多かったものの「成功とは言い難い」ことがわかります。当初の目標(前提)を示すことで、読む人が誤解する余地をなくしています。

前提をしっかり書くことは、前提を忘れてしまっている恐れのある人にとっても大きな“助け舟”にもなるのです。

提案・企画では「背景説明」が重要

「前提」と似た言葉に「背景」があります。前提同様、背景を省略してしまうと誤解を招く恐れがあります。とくに提案や企画を伝えるときには背景説明は必須です。

以下は、社員Aさんによる社内への提案です。

【提案】
社内に、社員全員が気軽に使える仮眠室を設置してはいかがでしょうか?


 提案内容は明快ですが「どうしてそれをする必要があるのか?」についての記述がありません。この提案に至った背景が書かれていない状態です。以下の文章を添えることで提案内容の説得力が高まります。

【提案の背景】
昼食後に眠気に襲われている社員は少なくありません。眠気のある状態で作業をすれば効率と生産性が低下します。現に、先月起きたふたつの事故も昼食後の時間帯で、該当社員からは「眠くて集中力が低下していた」というコメントが出ています。また、仮眠が脳の効率を高めることは、さまざまな研究結果で明らかです。カリフォルニア大学の研究によると〜

 このような背景がわかれば、提案内容の意義をより強く感じることができるでしょう。もっと言えば、こうした背景こそが、実は提案や企画の採否を左右する重要な要素なのです。

前提と同様に「わざわざ言わなくてもわかっているだろう」という“思い込み”は禁物です。背景を説明しなければ、提案や企画の必要性を理解してもらうことは至難の業でしょう。

あなたが書こうとしているその文章に、必要な前提や背景説明は盛り込まれていますか? 前提や背景を伝えることで、やり取りにムダやロスがなくなり、仕事の効率と生産性も高まっていくはずです。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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