一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第37回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、ビジネスシーンでの効果的な接続詞の使い方について。
文章が上手い人ほど「接続詞」を使いこなしている
文章と文章を接続し、話の流れを整える役割を担う「接続詞」。文章が上手な人ほど接続詞を適切かつ効果的に使っています。
接続詞には「読む人に文章の行く先を知らせる役割」があり、その中には、「接続詞のあとに続く文章の内容を決める役割」を備えているものもあります。つまり<この接続詞を使ったら、続いて必ず◯◯について書かなければいけない>というタイプのものです。
ふだん説得力の高い文章を書いている人ほど、このタイプの接続詞を上手に使っています。本稿ではビジネスシーンで重宝する「説得力が高まる2つの接続詞」をご紹介します。
「なぜなら」で理由・根拠を明確に示す
接続詞「なぜなら」は、それまで述べた内容の「理由・根拠」を伝えたいときに使います。理由や根拠を明確にすることで、論理性が強化され、文章全体の説得力が高まります。
【例文】
私はA案に賛成です。
なぜなら、スマホを使うことによってメインターゲットである20代女性に訴求しやすくなるからです。
もしも、この文章の「なぜなら」以降が書かれていなかったとしたら、読む人は納得できないでしょう。理由が不明瞭だからです。
ビジネスシーンにおいては「理由・根拠」が極めて重要です。どんな結論も理由がなければ(もしくは弱ければ)、その結論の価値は低減します。ふだんから「なぜなら」を使っている人は、理由を語ることへの意識が高い人です。
もっとも、「なぜなら」と書いたからには、読む人が納得するにふさわしい理由・根拠を書かなければいけません。自分の結論を支える理由・根拠は何なのか? 文章を書く前に、この点についてしっかり考える必要があります。
ちなみに、「なぜなら」というフレーズは、必ず「〜(だ)から」で受ける呼応表現です。「〜(だ)から」を省略しないようにしましょう。
✕ なぜなら、テレワークの影響で夫婦が一緒に過ごす時間が増えています。
○ なぜなら、テレワークの影響で夫婦が一緒に過ごす時間が増えているからです。
「たとえば」で具体例を示し、理解を深める
接続詞「たとえば」は、それまで述べた内容についての具体的な例(体験談や事例、詳細など)を示したいときに使います。具体例を示すとことによって、読む人の理解が格段に深まります。
「たとえば」は、“これから一例をお見せしますね”というシグナルのようなものです。この言葉を書くことによって、読む人は具体例を受け取る準備を整えます(結果として理解度が高まります)。
【例文】
集客方法もそれぞれ異なります。たとえば、A社ではインターネット広告を多用していますが、B社ではSNSを使ったファンづくりに注力しています。
【例文】
佐藤社長の発言が物議を醸すことは少なくありません。たとえば、「リストラされた50代のビジネスパーソンに門戸を開く」というアイデアもそのひとつです。
どちらの例文も、冒頭の一文目だけでその真意を理解することはできませんが、「たとえば」を用いて具体例を示すことで、理解度はもちろん、説得力も圧倒的に高まります。
仮に、一文目で文章が終わっていたら(具体例がなかったとしたら)、読む人は「異なるって……どういうこと?」「物議を醸す発言って……どんな物議?」とモヤモヤすることでしょう。
「たとえば」のあとに続く文章を読んだ読者が、頭の中でリアルな様子や映像を思い浮かべられたら、その具体例は及第点です。具体例が複雑すぎると理解度が下がります。できるだけシンプルに伝えるよう心がけましょう。
「結論」「理由・根拠」「具体例」を語ると信頼度UP
ビジネスシーンで文章を書く際に大事なのは「結論」「理由・根拠」「具体例」の3点です。結論がはっきりしないのは論外としても、結論を下支えする「理由・根拠」や「具体例」が抜け落ちてしまうのもよろしくありません。
「理由・根拠」と「具体例」を確実に導き出すための接続詞が「なぜなら」と「たとえば」です。この2つの接続詞を意識的に使うことによって、読む人の納得度が格段に高まります。
「理由・根拠」と「具体例」は、営業メールから企画書、提案書、報告書まで、あらゆるビジネス文章に求められる要素です。「なぜなら」と「たとえば」を有効活用していきましょう。