株でもFXでも、相場は日々変化する。だからこそ毎日向き合い、記録し、経験を蓄積するのが王道――勝ち続けているトレーダーは異口同音にそういいます。そのために「トレーディングノート」をつけている人も少なくありません。
では、どう記録していけばいいのか。その一端をFX億トレ・ぶせな氏の著書から見てみましょう。
※本記事は『最強のFX 1分足スキャルピング エントリー&イグジット実践ノート』の一部を抜粋のうえ、編集したものです。本書で学んでほしいこと、それはずばり「ルールを作るプロセスを学ぶこと」です。トレードルールを自分で作ることが大切なのはもちろん、FXの世界で長く勝ち続けるには自分で作ったルールを改善していくことが重要です。
ルールを作るための第一歩として、トレードをノートに記録することからはじめましょう。何を書くのかについて、決まりはありません。ルールに結びつくことなら、何でもいいでしょう。
私は先述したように、FXをはじめてから4~5年は勝てませんでした。そのなかで唯一やっていたことは、FX関連の書籍を読むこととノートに記録することです。これだけはFXをはじめた当初からやっていましたし、今でも続けています。投資関連の本を読むと、使ってみたいアイデアが思い浮かんだり、調べてみたい項目が出てきたりします。そのつど、ノートに書きとめていました。具体的には次のようなことです。
- わからない用語
- チャートパターン
- アノマリー的なこと
- こうなりやすいというパターン
- 今の自分にできること
- 資金管理とロット数の検証
- これからやるべきこと
- 試してみたい注文方法
- エントリーとイグジットの決めごと
- 中長期トレンドの流れ
- 手書きチャートに後悔ポイントを書く
- こうすれば勝てていたという手書きチャート
他にも、毎日トレードしていて感じたことや、FXに限らず将来やりたい夢など、メモ代わりに何でも書いていました。モチベーションがアップする次のようなこともです。
- 利益の皮算用
- 30歳、40歳、50歳になったときに目指す姿
- FXで稼いだあとにやりたいことリスト
- 自動売買などの裁量トレード以外の稼ぎ方
- ほしいもの、ほしい家、ほしい車などの「ほしいものリスト」
ノートは自分以外の誰が見ることもありません。ちょっと恥ずかしくなるようなことも書きとめておくことをおすすめします。そのときは何の役にも立たないかもしれません。しかし、時間が経つと何かしらのアイデアにつながることもあります。役に立つことだけを書きとめようとすると、何も書けなくなります。
また、役に立つかどうかはそのとき決まるのではなく、あとになってわかることも少なくありません。アイデアが100個思いついたとしても、実際にルール化できるなど役に立つのはせいぜい1個くらいではないでしょうか。ほとんどのアイデアは役に立ちません。100個のうち99個は無駄に終わるのですから、ノートに取るのがバカらしく感じることもあります。
しかし、そのときは無駄に思えたとしても、あとから見返すと「これはまだ検証していなかった」と気づくこともできます。もし書きとめていないと、検証していなかったことすら忘れてしまうものです。ですから、思いついたことは何でも書きとめましょう。
思いついたということは、それが今の思考回路であり、あなたのトレード脳なのです。内容の質は考えないほうがいいです。それを書きとめるからこそ改善していけるのです。むしろ、役に立たないことをどんどん出したほうがいいです。これ以上思いつかない、これ以上書くことはない、というくらいノートに書きましょう。
実際の私の手書きメモ
では参考までに、実際の私のトレードノートを見てみましょう。まず、手書きでメモしたものです。下図を見てください。
為替市場は24時間動いていますが、主に3つの市場に分けられます。それぞれの市場では参加者が異なるため、市場が変わると値動きが変わることが多いです。その大切さを忘れないように、自分で書きとめたものです。また、相場はレンジとトレンドの繰り返しで、それぞれの市場でどちらにトレンドが出るのか意識しておくとルール化しやすくなります。これを書いておくことで、見返せばすぐに思い出せます。
次にこの図を見てください。
これはスキャルピングのルールを作っている最中のメモです。その日の相場でどうすれば勝てていたのか、何がダメで、どうしたほうがよいか、感じたことを書きとめています。思いついたことをすぐに書きとめることで、自分なりのトレードルールにつながります。
読み返すとわかりますが「確実にこうなる」というメモはありません。もしかしたら、こうしたほうがいいのではないか、という問題提起に近いメモです。疑問に思ったことをその場で書きとめます。答え合わせができるのは、かなり先になるでしょう。1年先かもしれませんし、なかには一生答えが出ない可能性もあります。
相場では、絶対にこうなるという断定はできません。あくまでも「こうなりやすい」という確率が高いものをいくつも組み合わせ、全体で確度の高いルールにしていきます。
このようなトレードノートを何冊も作っていきましょう。書いて読み返すことで経験値になっていきます。これは投資の実績をまとめた本を読むのと同じことです。自分だけの本を作ってください。そして、何度も読み返してください。
次の図は、暴落した相場で感じたことを書きとめたものです。
私は、リーマンショックで大損しているためか、暴落相場にはかなり敏感に反応します。二度と同じ経験はしたくないため、下げているときにロングポジションを持ち、急騰を期待して含み損に耐えることはしません。
仮にロングでエントリーしたとき、さらに下げて含み損になったらすぐに損切りをします。これは、リーマンショックで学んだことです。そして、暴落し続けることはなく必ず反発するときがきます。それも少しの反発ではなく、それまでの下げ幅を帳消しするほど上昇するのが、暴落後の相場です。
しかし、それを期待して含み損に耐えるのはかなりリスキーです。底をとらえて急騰に乗ることもできますが、それはあくまでも結果論です。落ちるナイフをつかむのと同じなので私はやりません。
でも、過去のトラウマに縛られていては成長できません。暴落するということはボラティリティが高く、乱高下するため、スキャルピングにとって大きなチャンスになります。こういうとき萎縮することなくトレードができれば、大きな利益をつかむことが可能となります。
そのために私は、暴落相場でどうすればよかったのかと感じたことを書きとめました。注意点や値動きの特徴を自分なりに分析し、次の同じような相場がきたときに対処できるようにしておきます。目の前で起きている相場で感じたことは、その場で書きとめていないと忘れてしまいます。このようにメモで残しておけば、たとえ何年経っても読み返すだけで昨日のことのように思い出すことができるのです。
このメモは、2020年の2月から3月にかけて起こったコロナショックで活かすことができました。メモには次の4つのことを書きとめてあります。
- 暴落は何日か続く→1日のなかでナンピンはダメ
- トレンド方向へついていくこと。トレンドは何時間も続く
- エリオット波動の3段、4段を見る
- 次の暴落は必ず戻り売りを仕かける
コロナショックでは、米ドル/円の場合、2020年2月20日の112.23円を天井に、2週間暴落しました。1や2のように、暴落相場でのトレード方法を大枠で決め、3、4で具体的なトレード戦略を忘れないようにできました。
かなり大雑把な内容に感じるかもしれませんが、メモがあるのとないのとでは、相場への向き合い方がまったく変わります。何年も前に感じたことをいよいよ活かすときだという認識があるだけで、チャートをよく観察しようとします。そうすると、他の部分にも目を配るようになり、結果として深いチャート分析ができるのです。