日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2021/02/22 11:57
好天に恵まれた20日、神奈川県松田町を訪れた。目的は同地にある珍しい地名だ。
小田急線新松田駅を降りると、駅前の電柱に貼られている看板に書かれた地名が、松田町松田惣領。新松田駅周辺から北側にかけては松田惣領という地名が広がっている。そして、ここからJR松田駅方面を過ぎて山北方面に歩くと、やがて松田町松田庶子という地名となる。ざっくりいうと、東側が松田惣領で西側が松田庶子なのだが、実際にかなり複雑に入り組んでいる。
この地名を知ったのは30年以上前で、国土地理院の紙の地形図をみているときに気が付いた。「惣領」「庶子」という中世の家に関することばが、そのまま地名として残っているのは面白い。
そもそも惣領とは跡継ぎのこと。平和な時代である江戸時代には、よほどのことがない限り長男が跡継ぎとなったが、乱世の続く中世では跡を継ぐのは長男とは限らず優秀な子が家を継いだ。これが惣領で、その他の子どもは庶子といわれる。
この付近を支配した松田氏は、領地を惣領と庶子に分け与え、それがそのまま「松田惣領」「松田庶子」という地名になって現代にまで残っているのだ。ちなみに、「松田庶子」の読み方は「まつだそし」。これも中世っぽい読み方だ。