日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2021/02/15 10:03
14日から始まったNHK大河ドラマ「青天を衝け」。いきなり徳川家康が登場して驚いたが、主人公は日本資本主義の父といわれる渋沢栄一だ。ドラマ中でも紹介されたように、渋沢家は武蔵国血洗島(埼玉県深谷市)の豪農の出。江戸時代、農家でも普通に名字を持っていた。とくに渋沢家のように豪農では名字があるのは当然で、「渋沢」は地名に由来しているという。
渋沢という地名は各地にある。最も有名なのは神奈川県秦野市の渋沢だが、血洗島の渋沢家は甲斐源氏の一族の末裔と伝え、名字の地は北杜市にあるという。中央線日野春駅の近くに鳩川という川が流れており、この川の支流の流域が渋沢という地名だ。
「渋い」という言葉には、物が滑らかに動かないという意味がある。確かに渋のつく地名は、「渋沢」に以外も「渋井」「渋江」「渋川」「渋谷」など、川や水に関係するものが多い。「渋沢」とは川の流れがゆるく澱んでいる沢を指すものだろう。地図で見るとこの付近は川が蛇行しており、流れが緩やかなのは明らかだ。
渋沢家は豪農の傍ら豪商でもあり、最も栄えていた「東の家」は名主として名字帯刀を許され、岡部藩の御用達でもあった。そして、「中の家」の長男栄一は四書五経を学んで剣術修行をしていたなど、武士としての素養も身に着けていた。経済的に恵まれていた幕末の豪農は、各地で武士顔負けの人材を輩出している。