一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第31回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、「要約力」を鍛えるために意識すべき習慣ついて。
要約力を鍛えるにはまず「制限」を意識する
ビジネスシーンでのダラダラ話やダラダラ文章は百害あって一利なし。多くの人がこの意見に賛同するのではないでしょうか。「長く話したから」「たくさん書いたから」といって、相手に伝わるとは限りません。
一方で、要点を押さえて簡潔に話や文章をまとめたとき、つまり、要約力を発揮してアウトプットしたとき、相手はストレスなく内容を理解することができます。
でも、どうしたら要約力を発揮することができるのでしょうか? そのひとつに「制限を加える」という方法があります。
たとえば「上司に報告する際は1分で報告する」や「文章を書くときには300字でまとめる」などと、自分のアウトプットに制限を加えることによって、大事なポイントを抜き出すスキルが高まります。
エレベーターピッチでお客様のハートをつかむ!
エレベーターピッチをご存知の人もいるでしょう。エレベーターピッチとは、エレベーターに乗っているくらいの「ごく短い時間」で、乗り合わせた相手に説明・プレゼンすることです。時間が限られているので、1秒もムダにすることはできません。
たとえば、営業マンであるあなたが、商品の説明をするためにお客様のところに行ったとします。しかし、お客様は超多忙で、もう出かけなくてはいけない。あなたの相手をしている暇はありません。仕方なく、あなたはお客様が30階のオフィスから1階までエレベーターで降りる間に、商品説明することを決めました。あなたに与えられた時間は30秒程度です。このとき、あなたは何を伝えますか? 要約力が問われる場面です。
おそらくあなたは一切のムダなく、本当に重要なポイントだけ抽出して伝えることに注力するでしょう。わずか30秒で相手から「へえ、それは気になる商品ですね。近いうちに詳しくお話を聞かせてください」と言ってもらうために、最適な情報と言葉を選ぶでしょう。
このとき、あなたの要約力は活性化しています。捨てるものは捨て、残すものは残す――その取捨選択を大胆かつ緻密に行っている状態です。
Twitterの140文字で要約力が身につく!
文章でまとめる力を養いたい人には、Twitterでのエクササイズをおすすめします。なぜなら、Twitterは1投稿が140文字と決まっているからです。文字数の制限があることで要約力が発揮されるのです。
140文字で文章をまとめるためには「本当に重要な情報+α」しか書くことができません。140文字の投稿をするとき、あなたの脳では情報に優先順位をつけて、書くべき内容を精査しているはずです。
たとえば、「今日見たドラマ」についてTwitterでつぶやくとしたら、1時間のドラマから印象的なポイントを抜き出そうとするでしょう。情報の9割近くを捨てながら、最重要メッセージに絞り込むはずです。「最近読んだ本」「初めて行ったレストラン」「最近のマイブーム」などなど、140文字のつぶやきを習慣化することによって、要約力が鍛えられていきます。
「制限」がビジネスパーソンの能力を伸ばす
エレベーターピッチも140文字のTwitter投稿も、アウトプットに「制限」を加える要約力のトレーニングです。アウトプットに制限を加えることによって、脳内にある膨大な情報から「死んでもこれだけは言っておく!」というひと言を見つけ出すことができるようになります。
慣れてくれば、制限を加えることが「苦」ではなくなるでしょう。それどころか、もう長々と話をすることや、長々と文章を書くことに抵抗を感じるようになるはずです。なぜなら、簡潔にまとめてアウトプットするほうが、相手に伝わりやすくなる、と知ってしまうからです。
あなたの要約力が低いとしたら、それは<自分に十分な時間や文字数が与えられている>と誤解しているからかもしれません。話をするときに「1分で話す!」、文章を書くときに「200文字にまとめる!」という具合に、シチュエーションに応じて、アウトプットに制限を加えましょう。この制限が、あなたの要約力を伸ばしていくはずです。