「私の言うことって、どうしてうまく伝わらないのだろう」
「あのとき言ったことで、なぜムッとされたのだろう」
言葉は、自分が思っていた通りに受け取られないもの。「それを適切に言い換えるとすれば?」というテーマで好評を博したコラムがリニューアル!
職場に限らず、日常会話でもよくある「こんなときどう言えばいい?」という疑問の答えを、テレビ朝日を退社後、フリーアナウンサーや話し方講座の講師として活躍する渡辺由佳氏が解説します!
(毎月第2・4水曜日更新予定)
2020/07/26 14:36
最近、エレベーターに乗ること自体が少々憂鬱になってきました。なぜならば、ソーシャルディスタンスやマスクを巡る、ちょっとしたトラブルが絶えないからです。
先日、マンションのエレベーターを待っていると、上の階から60代ぐらいの女性が先に乗って来ました。私は家族と2人だったので、エレベーターが密になるといけないと思い、「どうぞお先に」とその女性に伝えました。
すると、「え!? 密になるから?」と言われ、怪訝な顔をされました。それでも、私たちは一度「どうぞ」と言ってしまった手前乗り込むこともできず、「どうぞ」ともう一度伝えると、その女性は怪訝な表情のまま、エレベーターで降りていきました。
おそらくその女性は、あまり密になることを気にしないタイプだったのだと思います。相手への気遣いからエレベーターへの同乗を避けたつもりが、結果的に相手を不快な気持ちにさせてしまい、後味の悪いものとなってしまいました。
一方、こちらは知人の話です。弁護士の知人が裁判所の法廷の時間ギリギリになったので、慌ててエレベーターに乗ったところ、後から50代ぐらいの女性が乗って来ました。その女性から、いきなり「マスク、ちゃんとつけてください!」と言われたのだそうです。
知人は、裁判所まで走ってきたのでマスクが鼻の下に少しずれしまっていたことに気づき、「すみません」と言って、マスクを直したとのことでした。いきなり見ず知らずの人からマスクのつけ方を注意され、動揺したと話していました。こちらの女性は、さきほどの例とは真逆で、密になることをとても気にするタイプだったのだと思います。
今までは、同じエレベーターに乗っていても全く言葉を交わすことがなかった相手と、「密になる」という理由でちょっとしたトラブルに発展するということが避けられなくなっています。同乗した相手が密を気にする相手なのかそうでないかは、外見からはまったくわからないからです。
そんなとき、どう対応すれば、トラブルを避けられるのでしょうか。
やはり、必要以上に言葉を交わさないようにするということが得策のように思います。前者の例で言えば、「そうです! 密になるからお先に行ってください」というだけで角が立ちそうですし、後者の例で言えば「だったら、あなたが次のエレベーターに乗ればよかったんじゃないですか?」と言ってしまうと、売り言葉に買い言葉になってしまいます。
Withコロナの時代になって、コロナへの警戒感は人によって大きく異なります。それぞれの感覚の違いを等しくならすのは不可能です。コロナを気にしない人には「私は気にします」ということを短い一言で「どうぞお先に」という言葉で表現する。
コロナが心配だという人を不快にしてしまったときには「すみません」「失礼しました」とだけ伝える。必要以上に言葉を交わさないことがトラブルを避けるコツのように思います。まずは、そういったトラブルが起きやすくなってしまっている現実を意識するだけでも想像外のできごとに対処できるかもしれません。
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