「私の言うことって、どうしてうまく伝わらないのだろう」
「あのとき言ったことで、なぜムッとされたのだろう」
言葉は、自分が思っていた通りに受け取られないもの。「それを適切に言い換えるとすれば?」というテーマで好評を博したコラムがリニューアル!
職場に限らず、日常会話でもよくある「こんなときどう言えばいい?」という疑問の答えを、テレビ朝日を退社後、フリーアナウンサーや話し方講座の講師として活躍する渡辺由佳氏が解説します!
(毎月第2・4水曜日更新予定)
2020/06/10 11:39
緊急事態宣言が解除されて以来、街の中も通勤電車もやや密な状態になりつつあります。そのような状況下でとくに気になるのが、マスクをしないで咳をする人です。
たとえば、レストランで誰かがゴホゴホと咳をすると、ついついマスクをしているのかどうか振り返りたくなる人もいるでしょう。レストランでは食事中ということもあり、お客様はマスクをしていない人がほとんどです。そんなときに誰かが咳をしたら、飛沫が自分のテーブルまで飛んでこないか不安にもなりますし、気にしだすと一気に食事もまずく感じるようになります。
かといって、見ず知らずの人に「マスクしてもらえませんか?」とも言いにくいですし、レストラン側としても、お客様に「咳が出そうになったら、すぐにマスクをするか、ハンカチを口にあててください」とは、なかなか言えないでしょう。
もちろん、レストランで食事が運ばれてくるまではマスクをきちんとしているお客様もいます。そういったエチケットを大切にする姿勢はぜひ見習いたいと感じます。
ところ変わって、それが職場となると我慢の限界が一気に下がります。マスクもしないで平気で咳をする人がいたら「マスクをなんでつけないんですか? 咳エチケット知ってます? 今どきマスクもしないで咳をするなんて、どうかと思いますよ!」と、ついつい攻撃な言い方をしたくなることもあるでしょう。
もしここまで言ってしまうと、売り言葉に買い言葉で、言い合いになりかねません。それは、言われた相手が自分の人格をまるごと否定されているような気持ちになってしまうからです。
また、「ウチは小さな子がいるからコロナになると困るんで、マスクしてもらえません?」などと言うのも、理屈としてはわかりますが、独りよがりな印象を与えて不愉快に思う人もいるでしょう
社会の雰囲気が若干緩みがちになりながらも、まだまだ過敏にならざるを得ない状況では、こうした注意をしにくいものです。そのとき、角を立てずにマスクするよう伝えるには、どう言えばいいでしょうか?
一つの方法が、「〇〇さん、まだ感染者もゼロじゃないですから、みんなでマスクをしたほうが安心して仕事ができると思いますよ!」と伝えるものです。「みんなが安心」という言葉のなかには、もちろん相手も含まれているわけですから、(私はあなたのことも心配しているんですよ)という気持ちを少なからず伝えられます。
もっとストレートに相手を心配しているというニュアンスを出すためには「私、〇〇さんが感染しちゃったら、心配なんですよね。マスクつけてると、やっぱり安心ですよ!」と言うのもアリでしょう。そうすれば、あなたのために言っているということを一番強く伝えられます。
新型コロナウイルスに対する不安は、人によって差があります。緊急事態宣言が解除された瞬間に、もうコロナウイルスは無くなってしまったかのような感覚の人もいます。そういった人たちに気持ちよくマスクをつけてもらうためにも、ぜひ、モノの言い方にはひと工夫が必要だと思います。
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