「私の言うことって、どうしてうまく伝わらないのだろう」
「あのとき言ったことで、なぜムッとされたのだろう」
言葉は、自分が思っていた通りに受け取られないもの。「それを適切に言い換えるとすれば?」というテーマで好評を博したコラムがリニューアル!
職場に限らず、日常会話でもよくある「こんなときどう言えばいい?」という疑問の答えを、テレビ朝日を退社後、フリーアナウンサーや話し方講座の講師として活躍する渡辺由佳氏が解説します!
(毎月第2・4水曜日更新予定)
2020/01/08 11:39
新しい年を迎えました。2019年の「今年の漢字」は令和の「令」でしたが、去年の私を一字で表すと「走」。別にマラソンをしているわけではないのですが、仕事と家事と母の世話という3つの頂点をひたすら走り続けて終わった1年でした。
だから、今年の目標は「落」です。この字を書くと「試験に落ちる」とか「仕事のレベルが落ちる」など、いいイメージがまったく湧いてきませんが、私が意図しているのは「落ち着きたい」の「落」です。何事も追われないで、少しじっくり落ち着いてやってみたいと思っています。
それはそれとして、話すときにはしっかり落ち着いたうえで喋らないと噛んでしまったり、おかしな日本語の使い方をしてしまいます(余談ですが、こちらの記事で噛み対策について解説していますので、あわせてどうぞ)。
とくに敬語を使うシーンはなおさら。しっかり落ち着いて話さないと、敬意はおろか日本語そのものが微妙になってしまいます。たとえば、私が社員研修の場で電話のロールプレイングをしてもらうと、必ず次のような話し方をする人がいます。
「こちらのほう、資料のほうをお持ちしましたので、内容につきましては、私のほうから、またお電話のほう、明日差し上げます」
この隙あらば「ほう、ほう」というフクロウのような話し方を、私は「フクロウ話法」と呼んでいます。話し手は、この「ほう(方)」をつけていれば「相手に向かって丁寧に話しているように聞こえる」と勘違いしていますが、これは敬意を表現しているどころか文法的にもまったく不要なものです。
ここで、このセリフから「ほう」を除き「こちらに資料をお持ちしましたので、内容につきましては、私からまたお電話を明日差し上げます」と話すとどうでしょう。こちらのほうが、ずっとスッキリして聞きやすくないですか?
とはいえ、どうしても「ほう」を使いたい場合もあるでしょう。その場合は次の3つの用法に限ってください。
上記のどれにも当てはまらないなら、思い切って「方(ほう)」を取ったほうが、ずっとスマートな敬語になります。
これともう一つ、同じような間違った敬語の使い方で「かたち(形)」という言い方があります。以下は、私の息子が通う高校で行われた修学旅行の説明会で、実際に旅行代理店の担当者が話していたものです。
「今回の修学旅行の代金をお支払いいただくかたちは、一括払いという形と分割払いというかたちがあります。一括払いというかたちを取っていただきますと、○月○日にご指定の口座から御引き落しというかたちとなります。」
この担当者は、15分ぐらいの説明の中で50回ぐらい「かたち」という単語を使っていました。この「かたち」という単語は不思議な言葉で、一度使い出すとなかなかやめられなくなってしまいますが、これに関しても以下のようにとってしまったほうが、極めてシンプルで聞きやすくなります。
「今回の修学旅行の代金のお支払方法は、一括払いと分割払いがあります。一括払いですと、○月○日にご指定の口座からお引き落しをさせていただきます」
これら不要な「ほう」「かたち」は、会計時の「から(例:○千円からお預かりします)」やレストランでの「なります(例:こちらA定食になります)」などとまとめて「バイト敬語」と呼ばれるなど、おかしな敬語の代表例とされています。これらを使わないように改めるだけで、あなたも敬語上手になれますよ!
緊張は克服しなくてもいい! 元テレビ朝日アナウンサーが、初対面・プレゼン・面接・スピーチなどの緊張する場面で、成功を収めるための考え方・話し方・伝え方のコツを伝授。「言いたいこと」が思いどおりに伝わる話し方ができるようになります。
価格:¥1,400-(税別)
テキスト採用など、大量・一括購入に関するご質問・ご注文は、
弊社営業部(TEL:03-3268-5161)までお問い合わせください。