時間を浪費するばかりで議論がまとまらず、何も決められない会議に参加していませんか。そんな「ダメ会議」には原因があります。

ここでは、コンサルタントで、情報活用術や仮説思考に関する著書も多い生方正也さんの新著『結果を出す人がやっている「思考整理」の習慣』の第4章「生産性の高い会議・打ち合わせを行うための思考整理」から、ダメな会議にありがちな特徴と、それらを改善する方法を紹介します。

×:なんとなく会議に参加している
 →自分の役割をイメージする

「お客様状態」で参加していて、何も発言しないメンバーがいると、会議は生産的でなくなります。

「テーマに対する知識が不足しているので意見が言えなかった」「自分の業務に直接関係ないのに、呼ばれたから仕方なく参加した」など事情は様々でしょうが、会議に参加している時間に対しても給料は支払われるわけですから、なんらかの貢献をしなければ参加する意義は限りなく低くなってしまいます。

このような状態を避けるには「その会議で自分はどんな役割を果たすべきなのかをイメージするといい」と、生方さんは指摘します。会議での役割は、司会者や意思決定役ばかりではありません。自分が持つ情報や知識を提供する役割や、当事者として主張を訴える役割もあるでしょう。

○改善ポイント

その会議の目的や議題から、自分の役割をイメージする

では、議題に関して知識もないし、自分の業務と関係ないという場合にはどうすればいいのでしょうか。生方さんは以下のようにアドバイスします。

それでもいろいろな役割があるはずです。知識がないことを逆手にとって、全く知識のない人から見て会議での話をどう感じるか。これを説明できれば、固定観念に固まった他のメンバーからは「斬新な見方ができるな」と思われるはずです。

また、自分の業務と関係のない話題に対してはどうでしょう? この場合も、業務と無関係だからこそ思い切った発想ができる可能性が出てきます。他の人と同じことしか言わなくても、その人を応援するという、立派な役割を果たすことができます。(154ページ)

このようにして、参加者がそれぞれの役割をイメージして臨めば、活発な議論が交わされる会議になるでしょう。

×:参加者がその場で思いついたことを話す
 →議論の流れを意識して話す 

一方で、「活発な議論」が交わされているようで、実際はそれぞれが言いたいことを言い合っているだけ、という会議もよくあります。要するに「議論がかみ合っていない」という状態であり、まとまらない会議の典型です。

これは、メンバーが会議の流れを無視して、それぞれその場の思いつきで発言してしまうために起こります。いくら会議では発言しなければならないといっても、これでは収拾がつかなくなります。会議にはルールがあるのです。

会議とは、発言したいことを話すのではなく、その場で話すべきことを話す場です。これは、司会者だけに任せておけばいいというものではありません。むしろ参加者全員が意識して、初めて守られるルールなのです。(158ページ)

○改善ポイント

議題や議論の流れに沿った内容を意識して話す

もっとも、自分の言いたいことが「その場で話すべきこと」かどうか、判断しにくい場合もあるかもしれません。そんな時は、議論していることを「~についての話」という風に頭のなかで言い換えると、判断しやすいそうです。

例えば、提案書のフォーマットを統一する打ち合わせをしているときに、「文字の色は黒ではなく青のほうがきれいだと思います」という発言があった場合は、それは「提案書で使う文字の色についての話」です。このように言い換えて理解し、自分の言いたいこととすり合わせれば、的外れな発言をして流れをさえぎってしまうことがなくなります。

議論の流れをしっかりつかんで意見を言う習慣を身につけましょう。

×:意見対立を“なあなあ”で収める
 →対立点を明確にして議論する

当然のことですが、会議では意見の対立がしばしば起こります。これを“なあなあ” で収めてしまっては、生産的な議論とは呼べません。会議を実のあるものにするには、対立が起こっても、お互いが納得できる答えを目指す姿勢が大切です。

そのためにはまず、議論の目的や前提、制約条件(コストや時間など、決定済みで動かす事ができないと思われる条件)にいったん立ち返ることが有効です。この部分がずれている場合、議論がかみ合うはずがないからです。

目的、前提、制約条件の捉え方に大きな違いがなければ、対立している意見そのものに目を向けていきます。次の3つのステップで議論をすすめましょう。

○改善ポイント

対立点を明確にしてその部分を重点的に議論する

ステップ1:対立意見の共通点と相違点を明確にする

意見が対立している場合、まずどこで対立しているのかをはっきりとさせる必要があります。全面的に意見が対立しているように見える状況でも、意見の一致している箇所はあるはずです。それを明らかにするのが最初のステップです。

ステップ2:対立の原因を明らかにする

次に行うのは、なぜ対立の原因が生じたのかを把握していくことです。こうした対立の原因を引き起こすのは、双方の立場です。

お互いの立場の違いによって、重視すべき点が異なり、それが対立へとつながっていくことがあります。その場合、お互いの立場の違いを受け入れたうえで、別の視点から、どんな結論が適切かを考えることが求められます。

ステップ3:見方を変える

意見が対立したときに行うと効果的なのが、見方を変えることです。

例えば、一段高い視点から対立している状況を見てみると、実はつまらないところで意見が食い違っているだけなのがわかったりすることがあります。また、視野を広げてみることも大切です。さらに、見る立場(視点)を変えてみるのもいいでしょう。いつまでも社内のものの見方をするのではなく、お客様の立場から見てみると、どちらの意見がいいのかが見えてきます。(171~174ページ)

以上、意見が対立した場合の対応方法について見てきましたが、この議論のゴールは決して「結局どっちの意見が正しかったの?」を決めることではありません。話の目的から見て最善の答えを探すことが、本来のゴールです。



『結果を出す人がやっている「思考整理」の習慣』では、会議・打ち合わせ以外にも「情報を集めるとき・伝えるとき」や「問題解決に取り組むとき」といった場面に必要な「思考整理」の方法を実践的に解説しています。

「会議でボーッとしたまま過ごしてしまった」「打ち合わせで自分の言いたいことがうまく伝わらない」「企画を求められているのにアイデアが全然出てこない」……自分の頭の中を整理する習慣が身につけば、こうした症状を改善できるかもしれません。