『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

「数字の魔法」で文章の説得力を高めよう!

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2019/11/06 16:59

(photo by紺色らいおん/写真AC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第21回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、グッとリアリティが増す「数字の使い方」について。

多くの人が自殺? 約25分26秒に1人のペースで自殺?

この連載の一覧はこちら

読む人が納得する文章には、しばしば数字が使われています。数字を使うと、読む人の頭に具体的なイメージが浮かび上がりやすくなります。また、その数字を“どう使うか”によっても、文章の説得力や、読む人に与える印象が大きく変わります。

1. 日本では、1年間にかなりの人が自殺しています。
2. 日本では、1年間に2万840人が自殺しています。

1と2は同じ状況について書いた文章ですが、多くの人が1よりも2の文章に説得力を感じることでしょう。1の「かなりの人」という表現が漠然としすぎているのに対して、2の「1年間に2万840人」は具体的で、その多さがリアルにイメージできるからです。

しかし「1年間に約2万840人が自殺しています」という書き方がベストかといえば、そうとも言い切れません。たとえば、以下のような書き方はどうでしょう。

3. 日本では、1日に約57人が自殺しています。

おそらく、1年単位で伝えた2よりも、1日単位で伝えた3の文章のほうが、自殺者数の現実を実感できるのではないでしょうか。

4.日本では、約25分26秒に1人のペースで自殺が発生しています。

さらに工夫を凝らせば、4のような書き方もできます。「えっ、そんなに多いの?」と、改めてその数字が示す“問題の深刻さ”に気づく人もいるでしょう。もちろん、数字を使うかどうか(あるいは数字を“どう使うか”)は、その文章の目的に応じて決める必要があります。

具体的な数字やパーセンテージで示す 1:アンケート調査の結果報告

別の例文を見てみましょう。

1. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、多くの人に美白効果が認められました。

「多くの人」と言われても、さっぱりわかりません。半数を超えたら「多い」と思う人もいれば、7割、8割以上でなければ「多い」とは思わない人もいます。「多い」に対する認識が共通でない以上、データとしては使えません。

2. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、160人に美白効果が認められました。

「160人」と具体的に人数を示した2のほうが、1よりも説得力のある文章です。あるいは、次のような表現もできます。

3. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、その80%に美白効果が認められました。

人数ではなく、パーセンテージ(%)を用いました。「人数で示すのとパーセンテージで示すのでは、どちらが文章の目的を達成しやすいだろうか? 」そこまで考えることができたら及第点です。

具体的な数字やパーセンテージで示す 2:店舗の売り上げ増加の報告

もうひとつ例を見てみましょう。

1. 当店では前年よりもすばらしい売り上げを達成しました。

「すばらしい売り上げ」と言われても、どれくらいなのかが想像できず、読む人に不親切な文章です。あいまいな書き方ばかりしていると、“仕事がデキない人”“仕事ぶりがずさん”“人を煙に巻いている”などと思われて、信頼を落とす恐れもあります。

2.当店では前年比200%の売り上げを達成しました。

1よりは親切な文章です。「前年比200%」ということは、前年の倍の売り上げがあったということです。読む人に与えるインパクトも小さくありません。

一方で、「前年比200%」がものすごく具体的かといえば、そうともいえません。売り上げが「150万円→300万円」と「1500万円→3000万円」と「1億5000万円→3億円」では、規模が大きく違います。パーセンテージを用いた2の文章では、残念ながらその規模を推し量ることができません。

3.当店では前年比200%(1500万円→3000万円)の売り上げを達成しました。

規模までしっかりと伝える必要があるなら、3のようにパーセンテージに加えて、実際の金額も具体的に数字で示したほうがいいでしょう。

数字を使った文章で、仕事の生産性を高めよう

なお、数字で語れるデータは、プレゼン資料やセールス文章の「信憑性」や「信頼性」を高める役割も担っています。具体的な数字で示すことで「ほう、それはすごい!」と、納得感や安心感を強める人もいます。

【納得感や安心感を高める数字の使い方例】

1.  30代の主婦80名に1ヶ月間使用していただいたところ、「期待以上にダイエットできた」が66%、「ほぼ期待通りにダイエットできた」が22%、「期待通りではなかったがダイエットできた」が9%と、実に97%の方から「ダイエットできた」との回答をいただきました。

2.◯◯大学の学生60名に10日間に渡って△△を実践いただきました。すると、「睡眠が深くなった」と回答した人が80%(48人)にのぼりました。

このように具体的なデータ(数字)を盛り込むことによって、読む人の納得度が高まりやすくなります。その結果、プレゼン資料やセールス文章の成果が出やすくなるのです。

もちろん、数字を使ったにもかかわらず、「たいしたことがない」「信頼できない」「信憑性が低い」と思われては意味がありません。数字の効果を最大限に引き出すためには、どういう使い方(提示方法)をすればいいのかよく考えましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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