一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第17回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、使い過ぎに注意したい「断言を避けた文章」について。
自分の意見や仕事に責任をもっていますか?
あなたは、断言を避ける文章ばかり書いていませんか? ことあるごとに「プランAの方向で検討してみることも考えてみます」「プランAでいいという気がしないでもありません」のような、弱々しい文章を書いてはいませんか?
1. 明日の正午には間に合うと思います。
2. 明日の夕方には間に合わせます。
歯切れの悪い1に対して、「間に合わせます」と断言した2は力強く好印象です。もちろん、絶対に1のような文章を書いてはいけない、というわけではありません。判断に迷うケースや、断定が難しいケースはよくあります。“オトナの所作”として、どうしても婉曲的な表現をしなくてはいけない場面もあるでしょう。
一方で、「責任を負いたくない」という理由だけで、無自覚に断定を避けているとしたら注意が必要です。あなたの文章を読んだ人たちから「弱腰」「逃げ腰」と思われているかもしれません。
ビジネスシーンであれば「無責任な人」「仕事がデキない人」「自分に自信のない人」などの烙印を押されかねません。そもそも、断言できるのにしないというのは、その文章を読む人に対しても、あるいは、自分が取り組んでいる仕事に対しても不誠実です。すべての文章において断言や断定を避けようとする人が、人から信用や信頼を得られることはありません。
以下は、あいまいな表現の一例です。使うことが“あたり前”になっている人は注意しましょう。
◆もしかしたら/ひょっとしたら〜かもしれません
◆おそらく/たぶん〜でしょう
◆〜のような気がします
◆〜ではないでしょうか
◆〜と聞きました
◆〜と思っています
◆〜と考えています
◆〜といわれているみたいです
◆〜という人もいるようです
◆〜という声(話)もあるようです
◆〜という可能性もあるようです
◆〜という指摘・批判もあるようです
◆〜と見る向きもあるようです
◆〜のようです
◆〜みたいです
試合前のボクサーのようにファイティングポーズをとろう!
断言(断定)を避けた文章ばかり書いている人は、遅かれ早かれ、周囲に見透かされ、見限られるでしょう。たとえば、上司から「例のプレゼン、勝算はあるのか?」というニュアンスのメールをもらったときに、以下のように返信したとしてらどうでしょうか。
そればかりは何とも言えません。
そもそも100%の成功が保証されたプレゼンなどありません。だからといって「そればかりは何とも言えません」と書いてしまえば、いたずらに上司を不安がらせるだけです。
試合前のボクサーが、「明日の勝算は?」と聞かれて、「そればかりは、わたしにもわかりません」とは言いません。「必ず勝ちます!」と断言するからこそ、人は応援したくなるのです。断言することには、自分を鼓舞する役割もあります。断言することで、その人の意識と行動がポジティブに変化するのです。
お任せください。明日のプレゼンは必ず成功させます。
あなたが上司だとしたら、「よし、コイツに任せよう!」と思うのは、このように断言するタイプではないでしょう。万が一、プレゼンの結果がよくなかったとしても、あなたがファイティングポーズをとった心意気は伝わります。
“恐れ”を手放せば、断言できる!
断言を避ける気持ちの裏にあるのは、その人自身が抱える“恐れ”の気持ちに他なりません。失敗すること、うまくいかないことによって、自分が責められたり、責任を取らされたりすることを案じているのでしょう。
しかし、“恐れ”とはある種の幻想です。断言したうえで、その人が真摯にその物事に取り組んだのであれば、周囲の評価は高まります。仮に断言したとおりの結果にならなくても、「うまくはいかなかったけど、よく頑張った」と思ってくれます。あなたが勇気をもって断言した姿勢を頼もしく感じ、好意的に見てくれるはずです。
とくに、自分の意見を明確に伝えなくてはいけない場面や、物事の白黒をはっきりさせなければいけない場面では、言葉を濁したり、あいまいにしたりしないようにしましょう。責任をとらされまいと自己保身に走る姿勢は、周囲からの信頼低下を招き、あなた自身からもエネルギーを奪ってしまいます。