2019年になってから5か月が経過しました。この間のドル円相場における値幅は7.43円程度。変動相場制への移行以来最も変動幅が小さかった2018年よりも「動いていない(18年年間の値幅は9.99円、うち1~5月の値幅は8.83円)状態」です。
こうした「動かない相場」において、スキャルピングで稼ぐのはなかなか困難です。スキャルピングによって勝ち続けてきた億トレ・ぶせな氏も、新刊『最強のFX 15分足デイトレード』(以下、本書)で次のように語り、今ではデイトレードを中心に稼ぎを伸ばしています。
スキャルピングは相場の変化に影響されやすく、ボラティリティ(価格の変動率)とリクイディティ(市場流動性)が低いと、チャンスが少なくなるのが悩みのタネでした。もちろん、手法に期待値があって、それに合う相場なら、ものすごい利益を上げることができます。
私の場合は、多くの通貨ペアを手がけていたのでチャンスがないということはありませんでしたが、「ドル円に絞ってスキャルピングする」と決めてしまっていたら、たとえばマーケットの注目がポンドやユーロに集まっている時期は、ドル円が膠着してチャンスが少ない時期をひたすらすごすことになります。
また、スキャルピングは1日中、チャートを見ている必要があります。専業トレーダーになって5年ほど経過し、1日中相場に張りついた生活から変化させたいと感じはじめました。
そして、スキャルピングで口座の凍結が頻繁に起こるなど、証券会社側がスキャルピングをよしとしない風潮があり(今はなくなりましたが)、1日中張りついて数pipsを狙うトレードを続けるよりも、1回のトレードで数十pips〜100pips以上の利幅を得ることが、もっとも効率のいいトレードではないかと考えたのです。
(本書「はじめに」より)
15分足を活用したデイトレ手法の解説は本書に譲るとして、今回はその中の「勝ち続けるために知っておきたいQ&A 10選」から、億トレのアドバイス・考え方を一部編集のうえ、pickupしてご紹介します。
Q. デイトレード手法は15分足以外では使えませんか? トレードチャンスが増える気がするのですが……
エントリー判断を15分足よりも短い時間軸(1分足、5分足、10分足など)で行なうことは、おすすめしません。デイトレード手法で、スキャルピングなどの短期売買はできません。逆に、長い時間軸(30分足、1時間足、4時間足、日足など)で判断するのはいいでしょう。
たとえば1時間足でトレードする場合、大局は4時間足、日足、週足、月足になりますね。エントリーからイグジットまで、1時間足が根拠になるので、ポジション保有時間は15分足のときよりも長くなります。数日になることもあるでしょう。デイトレードというよりも、スイングトレードに近くなりますが、これはOKです。
4時間足でトレードする場合は、数時間で決済することがなくなります。数日から1週間の保有になるので、完全にスイングトレードといえます。デイトレードだけでなく、時間軸を長くすることで、スイングトレードにも活用できるということです。まとまった時間が取れない日や、大きな利幅を狙いたいときは、スイングトレードを行なってみてください。期待値は十分高いでしょう。
私は15分足でトレードするのが基本ですが、ときには何日か持ち越して大きな利益を狙うこともあります。その場合、5つの決済方法を活用し、最大限のリターンを得るようにします。よくやる方法は、半分決済して、残りの半分を1時間足や4時間足の値幅達成まで持つトレードです。
Q. 勝率があまりよくありません。どこを直せばいいのでしょうか?
勝率はよかろうが悪かろうが、それ自体の意味はありません。勝率だけで考えるのではなく、必ず損益率と合わせて考える必要があります。下図のバルサラの破産確率表をみてください。
「バルサラの破産確率表」は、勝率[勝トレード数 ÷ 総トレード数×100]と損益率[平均利益(pips) ÷ 平均損失(pips)]の組み合わせで破産確率をみます。
例えば「月間で勝率が60%、平均利幅が100pips、損切り時における平均損失が-55pips」のような場合を考えると、損益率は100÷55≒1.8。これを上図に当てはめると破産確率は0%となり「このようなトレードができているなら、まず問題がない」ということが言えます。
このように、少々勝率が悪くても損益率がよければまったく問題ないわけです。たとえ勝率が50%だとしても、損益率が3なら、間違いなく勝ち続けることができます。逆に、損益率が1にもかかわらず勝率が40%だと、破産する確率は90%以上になってしまいます。このままでは勝てないので、改善しなければなりません。
このように、利幅と損切り幅に問題がないか、それに対して勝率はどうかなど、勝率と損益率はセットで考えてください。改善するときのコツは、損益率を上げることです。損益率を2や3にすることはできますが、勝率を上げるには限界があるからです。デイトレード手法はトレンドフォローが基本なので、損益率はすぐに上げることができます。
Q. いろいろな通貨ペアでシグナルが発生したら、同時にエントリーしてもいいのですか? それとも、どれか1つに絞ったほうがいいでしょうか?
多通貨ペアを同時に保有するのは、あなたが混乱しないようであれば問題ありません。気をつけることは、取引枚数と通貨ペアの組み合わせ方です。
たとえば、USD/JPYとEUR/JPYを同時にエントリーする場合、同じ方向のポジションなのでリスクが分散されません。USD/JPYが上がるとEUR/JPYも上がることが多いので、円、ドル、ユーロのうち、どの通貨が変動要因かを考える必要があります。
仮に、USD/JPYもEUR/JPYも売りでエントリーした場合、円売りになるとどちらも上昇するので、両方とも損切りになってしまいます。また、ドル買い、円買い、ユーロ売りになれば、USD/JPYは上昇、EUR/JPYは下落になることもあります。
このように、多通貨ペアを手がけることで、リスクを増やしていないかどうかをチェックする必要があります。いつも10枚でエントリーしているなら、5通貨ペアを同時エントリーするとき、それぞれ2枚を上限にするなど、取引枚数を減らしてリスク分散させるといいでしょう。同時にエントリーすること自体は問題ありません。
Q. USD/JPY以外の通貨ペアをトレードしたことがありません。通貨ペアの違いで何か気をつけることはありますか?
通貨ペアによって売買シグナルが変わることはありません。どの通貨ペアでも、やり方は同じです。
テクニカル分析からイグジットの方法まで何ひとつ変わりないので、逆にUSD/JPYだけにしておくともったいないと感じます。多通貨ペアを手がけることで、チャンスが増えます。そうすると、売買シグナルが発生しても今回は見送ったり、もっと期待値の高いポイントまで待つようになったりするなど、1回の売買シグナルで絶対に勝とうとしなくなります。
そもそもエントリーチャンスが少ない場合、ひとたび売買シグナルが出たら、なんとかして勝ちたいと思うでしょう。たとえば、21時から24時までUSD/JPYだけでトレードし、売買シグナルが1回だとしたら、その1回で勝ちたいと思うのが人間です。これで負けてしまうと、取り返そうと無駄なエントリーをするなど、どんどん悪循環にはまってしまいます。
しかし、仮に5通貨ペアを手がけていれば、21時から24時までに売買シグナルは何回かあるでしょう。ただし、回数が多いからといって、期待値が下がるわけではありません。絶対的な回数が多いだけです。そのため、何回かトレードすることでリスク分散にもなり、週単位、月単位で多通貨ペアを手がけると、利益を出しやすくなります。
通貨ペアの違いで気をつける点は、値幅の違いだけです。USD/JPYの場合、イグジットまでの利幅が30pipsだとしたら、GBP/JPYは70pipsくらいあるかもしれません。逆に、損切り幅も大きくなります。
ただ、トレード方法が変わることはありません。コツは、チャートで判断することです。よく「ポンドは値幅が出るので怖い」という人がいます。これは数字だけで判断しているからではないでしょうか。
チャートで判断していれば、仕組みは同じです。売買シグナルが発生してから値幅達成までのpips幅が大きいだけで、GBP/JPYだからチャートの形が特殊であるなどはありません。利幅と損切り幅が大きくなることに抵抗があるのなら、取引枚数を落とせばいいでしょう。
気をつける点はこれだけなので、私のように10通貨ペアまでいかなくても、5通貨ペアくらいはトレードしたいところです。通貨ペアが多いほうが、利益を上げる土俵が大幅に増えるので、おすすめです。まだトレードしたことがない通貨ペアがあれば、これを機会にぜひチャレンジしてください。