一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第13回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は文章の読みやすさを左右する「接続助詞の『が』」と「助詞の『の』」を活用する方法について。
実は文章の要? 接続助詞と助詞
「接続助詞」や「助詞」をはじめとする「てにをは」を意識して文章を書いたことはありますか? 意識はしているものの“重要事項”として捉えている方はごく一部ではないでしょうか。
もちろん、文章作成時に「書くべき内容」や「構成」「言葉の選び方」などに注意を払うことは大切です。一方で、仮にそれらがパフェークトだったとしても、接続助詞や助詞の使い方がマズいと、読みにくくて理解しにくい文章になってしまうことがあります。
今回は、よく見かける「単純接続の『が』の使用」と、「助詞のくどい連続使用」に対して警鐘を鳴らします。
単純接続の「が」を使っていませんか?
接続助詞の「が」には、大きく2種類の用途があります。ひとつ目は「逆説の『が』」です。「逆説の『が』」とは、先行文章(前述)と反対のことが後続文章(後述)に書かれているケースです。接続詞の「しかし」と同じ役割と言えば、わかりやすいでしょうか。
【逆説の「が」の一例】
◆頑張ったが、ノルマは達成できなかった。
◆表面は冷たかったが、中は熱かった。
もうひとつの用途は「単純接続の『が』」です。「単純接続の『が』」とは、先行文章の内容を留保し、最も大切な判断・結果については、『が』のあとに示す、というもの。その名のとおり、文と文を単純につなげるだけの役割なので、気分で“なんとなく”使ってしまうことが少なくありません。
ところが、「単純接続の『が』」はなかなかのクセ者。使うことによって文章の論理性が崩れやすく、文章も冗長になりがちです。
【単純接続の「が」を使用1】
ふらりと入った居酒屋で話題のビールを飲みましたが、外は相変わらず雨が降り続いていました。
【修正文】
ふらりと入った居酒屋で話題のビールを飲みました。外は相変わらず雨が降り続いていました。
「単純接続の『が』」を使用した1は、「話題のビールを飲んだ」ことと「外で雨が降り続いている」ことに因果関係がありません。文章と文章を“なんとなく”つないでしまった形です。あえて「が」を使う理由がないため、修正文では、句点(マル)を打って、文章をふたつに分けました。このほうが読む人に親切です。
【単純接続の「が」を使用2】
プロジェクトAの遅れを懸念する方もいるようですが、今日の会議では、その進捗をご報告します。
【修正文】
プロジェクトAの遅れを懸念する方もいるようです。今日の会議では、その進捗をご報告します。
「単純接続の『が』」を使用した2は、一見すると「が」の前後に因果関係があるように感じられます。しかし、実際にはふたつの文章を漫然と「単純接続の『が』」でつなげたにすぎません。修正文では句点を打って区切りました。
「単純接続の『が』」を言い換えるなら「先延ばしの『が』」です。くどい文章になりがちなほか、読む人に一瞬「逆説の『が』」のように勘違いさせてしまうのも“罪深い”といえるでしょう。
たとえば、2の「プロジェクトAの遅れを懸念する方もいるようですが」まで読んで「これは逆説の『が』だ!」と思った人は、「プロジェクトAの遅れを懸念する方もいるようですが、その心配はご無用です。極めて順調に進んでいます」のような文章(つまりは逆説)を予測します。しかし、続きを読むと、その予測は見事に裏切られます。読む人からすると肩透かしを食った形です。
「単純接続の『が』」を避けるおもな方法には、「句点を打つ」と「言葉を言い換える」のふたつがあります。
【ダメ文(「単純接続の『が』」を使用)】
珍しく早く出社してデスクをきれいに整理したが、今日はいいことがありそうだ。
【修正文】
珍しく早く出社してデスクをきれいに整理した。今日はいいことがありそうだ。
【ダメ文(「単純接続の『が』」を使用)】
料理が来たが、おいしそうだ。
【修正文1】
料理が来た。おいしそうだ。
【修正文2】
おいしそうな料理が来た。
いずれも修正文では「単純接続の『が』」を使った文章に見られた「惰性的な印象」が消えました。もちろん、内容が頭に入ってきやすいのも修正文のほうです。
同じ助詞のくどい連続使用にご注意!
「の」「に」「は」などの助詞は、文章を書くときに欠かせないパーツです。しかし、同じ助詞が連続して登場すると読みにくくなってしまうほか、読む人に幼稚な印象を与えてしまうこともあります。
【ダメ文1】
健太の兄の大輝のお気に入りのレストランに行った。
【修正文1】
健太の兄(大輝)のお気に入りのレストランに行った。
【修正文2】
健太の兄の大輝がお気に入りだというレストランに行った。
【修正文3】
健太の兄である大輝がオススメするレストランに行った。
ダメ文1を読むと、短い文章のなかに「の」が4つも使われています。読みにくいうえ、少し幼稚な印象を受けます。一方、修正文1では括弧を使って「の」の数を減らしました。
また、修正文2は「お気に入りの」を「お気に入りだという」に微修正、修正文3は「お気に入りの」を「オススメする」に変更するなど、ニュアンスは残しながらも、言い回しを工夫しました。
【ダメ文2】
斉藤に急にお願い事をするときにいつも変に気を遣う。
【修正文】
斉藤に急なお願い事をするときは、いつも変に気を遣う。
ダメ文2には、「に」が4連続で登場します。まどろっこしくて読みにくく感じられます。修正文では、言い回しを工夫し、「急にお願いするときに」を「急なお願いをするときは」に変更しました。また、途中に読点(テン)を打つことで、読みやすくなりました。
【ダメ文3】
私は原稿の締め切り日以外は金曜日には残業はしないことにしています。
【修正文】
原稿の締め切り日を除けば、私は金曜日に残業しないことにしています。
短い一文内に「は」を4回使っているダメ文3は、読みにくくてストレスが溜まります。修正文では読点(テン)を打つほか、言い回しを工夫するなどして、3つの「は」を削りました。その結果、内容が頭に入りやすくなりました。
助詞を最適化すると、文章は格段に読みやすくなる!
接続助詞や助詞の使い方を工夫するだけで「伝わらない文章」が「伝わる文章」へと変化します。とくに「単純接続の『が』」は無意識に使っている人が少なくありません。自覚症状のある方は、「以後、単純接続の『が』」は使わない」と決めてしまうことをオススメします。
また、助詞のくどい連続も比較的よく目にします。読み返したときに「読みにくい」と感じるときは、「言い回しを工夫する」「読点を打つ」「カッコを使う」「語順を入れ替える」などの工夫を凝らしましょう。
「単純接続の『が』」と「助詞のくどい連続」がなくなるだけで、文章のわかりやすさはグっと増すはずです。どうぞお試しください。