『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

文章でやりがちな「なんとなくの『が』」と「『の』の連続使用」に注意

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2019/03/06 16:49

(photo by acworks/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第13回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は文章の読みやすさを左右する「接続助詞の『が』」と「助詞の『の』」を活用する方法について。

実は文章の要? 接続助詞と助詞

この連載の一覧はこちら

「接続助詞」や「助詞」をはじめとする「てにをは」を意識して文章を書いたことはありますか? 意識はしているものの“重要事項”として捉えている方はごく一部ではないでしょうか。

もちろん、文章作成時に「書くべき内容」や「構成」「言葉の選び方」などに注意を払うことは大切です。一方で、仮にそれらがパフェークトだったとしても、接続助詞や助詞の使い方がマズいと、読みにくくて理解しにくい文章になってしまうことがあります。

今回は、よく見かける「単純接続の『が』の使用」と、「助詞のくどい連続使用」に対して警鐘を鳴らします。

単純接続の「が」を使っていませんか?

接続助詞の「が」には、大きく2種類の用途があります。ひとつ目は「逆説の『が』」です。「逆説の『が』」とは、先行文章(前述)と反対のことが後続文章(後述)に書かれているケースです。接続詞の「しかし」と同じ役割と言えば、わかりやすいでしょうか。

【逆説の「が」の一例】

◆頑張った、ノルマは達成できなかった。
◆表面は冷たかった、中は熱かった。

もうひとつの用途は「単純接続の『が』」です。「単純接続の『が』」とは、先行文章の内容を留保し、最も大切な判断・結果については、『が』のあとに示す、というもの。その名のとおり、文と文を単純につなげるだけの役割なので、気分で“なんとなく”使ってしまうことが少なくありません。

ところが、「単純接続の『が』」はなかなかのクセ者。使うことによって文章の論理性が崩れやすく、文章も冗長になりがちです。

【単純接続の「が」を使用1】
ふらりと入った居酒屋で話題のビールを飲みました、外は相変わらず雨が降り続いていました。

【修正文】
ふらりと入った居酒屋で話題のビールを飲みました。外は相変わらず雨が降り続いていました。

「単純接続の『が』」を使用した1は、「話題のビールを飲んだ」ことと「外で雨が降り続いている」ことに因果関係がありません。文章と文章を“なんとなく”つないでしまった形です。あえて「が」を使う理由がないため、修正文では、句点(マル)を打って、文章をふたつに分けました。このほうが読む人に親切です。

【単純接続の「が」を使用2】
プロジェクトAの遅れを懸念する方もいるようです、今日の会議では、その進捗をご報告します。

【修正文】
プロジェクトAの遅れを懸念する方もいるようです。今日の会議では、その進捗をご報告します。 


 「単純接続の『が』」を使用した2は、一見すると「が」の前後に因果関係があるように感じられます。しかし、実際にはふたつの文章を漫然と「単純接続の『が』」でつなげたにすぎません。修正文では句点を打って区切りました。

「単純接続の『が』」を言い換えるなら「先延ばしの『が』」です。くどい文章になりがちなほか、読む人に一瞬「逆説の『が』」のように勘違いさせてしまうのも“罪深い”といえるでしょう。

たとえば、2の「プロジェクトAの遅れを懸念する方もいるようですが」まで読んで「これは逆説の『が』だ!」と思った人は、「プロジェクトAの遅れを懸念する方もいるようですが、その心配はご無用です。極めて順調に進んでいます」のような文章(つまりは逆説)を予測します。しかし、続きを読むと、その予測は見事に裏切られます。読む人からすると肩透かしを食った形です。

「単純接続の『が』」を避けるおもな方法には、「句点を打つ」と「言葉を言い換える」のふたつがあります。

【ダメ文(「単純接続の『が』」を使用)】
珍しく早く出社してデスクをきれいに整理した、今日はいいことがありそうだ。

【修正文】
珍しく早く出社してデスクをきれいに整理した。今日はいいことがありそうだ。

【ダメ文(「単純接続の『が』」を使用)】
料理が来た、おいしそうだ。

【修正文1】
料理が来た。おいしそうだ。

【修正文2】
おいしそうな料理が来た。

いずれも修正文では「単純接続の『が』」を使った文章に見られた「惰性的な印象」が消えました。もちろん、内容が頭に入ってきやすいのも修正文のほうです。

同じ助詞のくどい連続使用にご注意!

「の」「に」「は」などの助詞は、文章を書くときに欠かせないパーツです。しかし、同じ助詞が連続して登場すると読みにくくなってしまうほか、読む人に幼稚な印象を与えてしまうこともあります。

【ダメ文1】
健太大輝お気に入りレストランに行った。

【修正文1】
健太兄(大輝)お気に入りレストランに行った。

【修正文2】
健太大輝がお気に入りだというレストランに行った。

【修正文3】
健太兄である大輝がオススメするレストランに行った。 

ダメ文1を読むと、短い文章のなかに「の」が4つも使われています。読みにくいうえ、少し幼稚な印象を受けます。一方、修正文1では括弧を使って「の」の数を減らしました。

また、修正文2は「お気に入りの」を「お気に入りだという」に微修正、修正文3は「お気に入りの」を「オススメする」に変更するなど、ニュアンスは残しながらも、言い回しを工夫しました。

【ダメ文2】
斉藤お願い事をするときいつも変気を遣う。

【修正文】
斉藤急なお願い事をするときは、いつも変気を遣う。

ダメ文2には、「に」が4連続で登場します。まどろっこしくて読みにくく感じられます。修正文では、言い回しを工夫し、「急にお願いするときに」を「急なお願いをするときは」に変更しました。また、途中に読点(テン)を打つことで、読みやすくなりました。

【ダメ文3】
原稿の締め切り日以外金曜日に残業しないことにしています。

【修正文】
原稿の締め切り日を除けば、私金曜日に残業しないことにしています。

短い一文内に「は」を4回使っているダメ文3は、読みにくくてストレスが溜まります。修正文では読点(テン)を打つほか、言い回しを工夫するなどして、3つの「は」を削りました。その結果、内容が頭に入りやすくなりました。

助詞を最適化すると、文章は格段に読みやすくなる!

接続助詞や助詞の使い方を工夫するだけで「伝わらない文章」が「伝わる文章」へと変化します。とくに「単純接続の『が』」は無意識に使っている人が少なくありません。自覚症状のある方は、「以後、単純接続の『が』」は使わない」と決めてしまうことをオススメします。

また、助詞のくどい連続も比較的よく目にします。読み返したときに「読みにくい」と感じるときは、「言い回しを工夫する」「読点を打つ」「カッコを使う」「語順を入れ替える」などの工夫を凝らしましょう。

「単純接続の『が』」と「助詞のくどい連続」がなくなるだけで、文章のわかりやすさはグっと増すはずです。どうぞお試しください。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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