人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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「いだてん」嘉納治五郎と嘉納家

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2019/01/07 11:10

(photo by kawamura_lucy/fotolia)

今年も6日からNHK大河ドラマ「いだてん」が始まった。大河ドラマとしては珍しく近代にから現代にかけての時代を取り扱ったもので、主人公は「マラソンの父」といわれる日本初のオリンピック選手金栗四三。ところが、初回の放送で金栗四三が登場したのは最後の数分間だけで、代わって主役を務めていたのが役所広司扮する嘉納治五郎であった。

嘉納治五郎は柔道の創始者として日本のみならず、世界的にも知られた人物だが、菊正宗で有名な神戸の酒造家、嘉納家の一族であることはあまり知られていない。

「嘉納」という珍しい名字には、由来に関わる伝説がある。南北朝時代、神戸・御影の沢の水で酒を造って後醍醐天皇に献上したところ、天皇が嘉納(喜んで受け取ること)したため「嘉納」の名字を賜ったと伝えている。江戸時代には銘酒の産地として知られた灘五郷を代表する酒造家となり、「菊正宗」の本嘉納家と、「白鶴」の白嘉納家の2家があった。

また、嘉納家は文化事業に投資したことでも有名で、両家ともに全国一の進学校として知られる灘校の創立者でもある他、白嘉納家は、国宝2件、重要文化財22件を所蔵する白鶴美術館も創立している。

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