『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

その「ムダなメールのやり取り」が、仕事の効率と生産性を下げている

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2019/01/09 17:16

(photo by acworks/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第11回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回はメール1通の効率を最大化するためのコツについて。

ムダな往復メールは「時間泥棒」

この連載の一覧はこちら

メールの対応に時間をとられることを嫌うビジネスパーソンは少なくありません。

それもそのはず。メールのやり取りに時間を取られて、本来、注力すべき仕事に支障をきたせば本末転倒。メールの処理が増えたことによって「残業時間が増える」「仕事の生産性が下がる」ということが起きれば、なんのために仕事をしているのか、わからなくなります。

なかでも、一回で済ませられる内容にもかかわらず、「追加、また追加」とあとから質問・確認してくるメールは、相手にとっても大迷惑です。あなたが、ムダなメールのやり取りを望まないなら、あなた自身も、相手に何回も返信を強いるようなムダなメールを書かないよう注意しなければいけません。

以下は、効率の悪いメールのやり取り例です。

【Aさん→Bさんへメール(1回目)】
次回のお打ち合わせの件で、ご連絡いたしました。
Bさんのご都合のいい日時を教えていただけますでしょうか。
【Bさん→Aさんへ返信(1回目)】
来週の18日(火)か19日(水)の13時〜14時に空きがございます。
【Aさん→Bさんへメール(2回目)】
では、18日(火)の13時〜14時でお願いできますか。
ちなみに、お打ち合わせの際に、
今回のデザインを担当するC社の佐々木さんにも
同席いただこうかと考えております。
よろしいでしょうか。
【Bさん→Aさんへ返信(2回目)】
C社の佐々木さんの同席の件、もちろん構いません。
【Aさん→Bさんへメール(3回目)】
それと、お打ち合わせのあと、30分ほどお時間をいただくことはできますか。
実は別で進めているプロジェクトZの件でご相談がございます。
【Bさん→Aさんへ返信(3回目)】
承知しました。14時45分までは空いていますので対応できます。


すでにメールが3往復です。メールのやり取りが済んだかと思うと、Aさんが次の質問(確認)をしてくるので、さすがにBさんもイライラし始めています。「頼むから用件は一度にまとめて伝えてほしい」というのが本音ではないでしょうか。

送信前に「伝え漏れはないかな?」と考えよう

メールの往復が増えれば、当然、時間と労力が取られます。相手があまりメールをチェックしない人であれば、3往復のやり取りに3日かかってしまうこともあります。非効率と言わざるを得ません。

先ほどのメールの場合、Aさんの1回目のメールの書き方次第では、わずか一往復で、やり取りを終えることもできたはずです。以下は「Aさん→Bさんへメール(1回目)」の書き換え例です。

【Aさん→Bさんへメール(1回目)】
次回のお打ち合わせの件で、ご連絡いたしました。
以下2点、ご確認いただけると助かります。

1)次回のお打ち合わせ日時
こちらの都合で申し訳ございませんが、
17日〜19日の3日間のなかで、
ご対応いただけそうな日時はございますか。
(難しい場合は、20日以降でご都合のいい日時候補をご提示願います)

2)デザイナーの同席
また、お打ち合わせの際に、
今回のデザインを担当するC社の佐々木さんにも
同席いただこうかと考えております。
よろしいでしょうか。

以上です。

お手数をおかけしますが、ご確認いただければ幸いです。

<追伸>
お打ち合わせのあと、30分ほどお時間をいただくことはできますか。
実は別で進めているプロジェクトZの件でご相談がございます。

もともと3往復したメールの用件は、それぞれ「打ち合わせの日時(1)」「C社の佐々木さん同席(2)」「別のプロジェクトZの相談(3)」の3つでした。1と2は同一の仕事内容ですから、上記の書き換え例のように、1回のメールにまとめたほうがいいでしょう。

3については、今回の打ち合わせとは別案件ですので、本来であれば、1や2とは別メールで連絡するのがセオリーです。しかし、今回は「お打ち合わせのあとに少し相談の時間がほしい」というお願いであり、本来の内容につながりがあるので、同一のメールに盛り込んでも問題ないでしょう。別メールにしてしまうと、かえって混乱を招く恐れがあります。

用件を漏れなく盛り込んだ「書き換え例」ようなメールであれば、返信するBさんもムダに時間を費やさずに済みます。以下は「Bさん→Aさんへ返信(1回目)」の書き換え例です。

【Bさん→Aさんへ返信(1回目)】
お打ち合わせの日程ですが、18日(火)の13時〜14時であれば対応可能です。
なお、C社の佐々木さんの同席の件、問題ございません。

くれぐれもよろしくお伝えくださいませ。

お打ち合わせ後のご相談の件も承知しました。
14時45分までであれば対応できます。

3つの質問・確認に的確に答えています。とくに問題がなければ、この1往復(あるいは、相手から「すべて承知しました」という旨を受け取って)メールのやり取りが終了します。

メール1通の効率を最大化しよう!

筆者のところにも、頻繁に「講演依頼」のメールが来ます。しかし、なかには「山口先生に講演をお願いしたいのですが、いかがでしょうか」のようにザックリとしか書かれていないメールも少なくありません。

「いかがでしょうか」と言われても、講演のテーマや日時、条件などがわからなければ答えようがありません。仕方ないので、私は「講演のテーマや日時、条件などを教えてほしい」という旨の返信をすることになります。一事が万事。こういう人とのメールは、ムダに長く続くケースがほとんどです。

もちろん、人間ですので、メールを送ったあとから追加で用件を思いつくこともあるでしょう。あるいは、2回目以降でなければ確認できないような事情もあるかもしれません(手順を踏まなければいけないケースなど)。細かくメールをやり取りすることが“絶対にいけない”というわけではありません。

とはいえ、一通のメールを書くときに「できる限りムダなやり取りが生じないように書こう」という意識をもっているか否かは、ビジネスパーソンの意識として極めて重要です。

「打ち合わせの日時」のメールをするときに「C社の佐々木さん同席」の件も伝えよう、と思いつくかどうか。その差は“微差”ではなく“大差”といえるでしょう。厳しい言い方をするなら、いつもあとから追加でいろいろな質問や確認をしてくる人は、「想像力」や「先読み力」が欠如している恐れがあります。

ドキっとした方は、「このメールを送ってきたら、相手はこう返してくるのではないか?」「このことを書いたら、相手はこういう疑問をもつのではないか?」「このことを先に伝えてあげれば、相手は返信しやすいのではないか?」という具合に、常に想像力を働かせて、先読みするクセをつけましょう(エクササイズとして有効です)。

そして、相手が抱くであろう疑問に先回りして答えてしまうなど、先読みしたことを、メールの文面に活かすのです。

想像力や先読み力に磨きがかかると、一度のメールで漏れなく質問や確認、連絡ができるようになります。「たかがメール」ではなく、「されどメール」です。相手の時間をムダに奪わない人が、デキるビジネスパーソンです。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

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