効率化マニアの外資系コンサルが教える! 無駄な時間をゼロにする「時間の断捨離」最前線<第10回>
現役外資系コンサルとして膨大な仕事を最少の時間でこなしつつ、月間10万PVブログ「NAEの仕事効率化ノート」も運営するNAEさんに、ビジネスの現場で役に立つ時短術のコツを教わります。今回は伝え方の基本である「あいまい、冗長な伝え方の無駄」について。
「何が言いたいの?」と思われる「残念な言葉」は使うな
「社内コミュニケーションの円滑化を強力に推進します」
「全社一丸となり御社をサポートする体制があります」
「デジタル化の波に耐えうるシステムを迅速に構築します」
仮にコンサルタントの私がこのような言葉で売り込みを受けたら、きっとこう返します。
「社内コミュニケーションって、どうやって円滑化するの? そもそも円滑化の定義は? なにとどう比べたら強力なの?」
「全社一丸ってどういうこと? なにをどうサポートしてくれるの? 体制って具体的には?」
「デジタル化の波ってなに? うちへどう影響すると思ってるの? 耐えうるってなに? 迅速ってどのくらい?」
かなりうざったい返しだと思いますが、これには理由があります。
私たちコンサルタントは入社してすぐに「あいまいな表現、冗長な表現」をしないことを、「伝え方の基本」として叩き込まれるからです。 なぜなら、あいまいな伝え方をすると相手と認識のズレが生まれてしまい、あとから大変な思いをしてしまうリスクがあるから。
さきほどの言葉は、提案書冒頭に書かれたキャッチコピーで、うしろに具体的な説明が続くならまだ良いでしょう。しかし、仕事の現場でこのような抽象的な表現をあなたが使っているとしたら大問題です。
そこで今回は、 NG表現=「残念な言葉」を避ける3つの基本と、それでもあえて使うべき例外をお伝えします。
「残念な言葉」を避ける基本はこれ!
ポイント1. 数字で語る
数値化できるものはできる限り数字を使って語るようにします。そうしないと、「いつ/どこで/だれが/なにを/なぜ/どのようにできるのか=5W1H」が不明瞭になり、なにも伝わりません。
・×:コミュニケーションの円滑化
・○:会議調整の時間と手間を50%削減
・×:若干時間がかかります
・○:30分ほどかかります
・×:ちょっとわかりません
・○:5問目まではお答えできますが、それ以降は上司へ確認が必要です
まずは数字を使ってしっかりと内容を明確化することが重要です。
ただし、あえて数字で言い切らないときもあります。それは相手から数値情報を引き出したいときです。
たとえば……
A:「会議調整の時間と手間を短縮します」
B:「どのくらい短縮してくれるんだ?」
A:「逆にどのくらい短縮したいですか?」
B:「そうだな、半分にはしたいな」
A:「ではそれ前提でプランを組みましょう」
という要領です。 こちらからあえて数字を提示しないことで、相手の要望や不満を引き出すのです。話し合いが不十分だと感じた時や、指針を整理したいときに使えるテクニックです。
ポイント2. 短く言い切る
次は、短く端的に結論を言うこと。冗長な伝え方はやめましょう。相手に結論を推察させるような言い方は、思わぬ行き違いを生むことになるのでNGだと心得てください。
・×:サポートできる体制を整えています
・○:サポートします
・×:結論としてはYesだというふうに理解しています
・○:Yesです
・×:仕事のスコープが増えてチームが全然回っていなくて進捗にも遅れが出て大変で……
・○:2人増員してください
ただし、婉曲表現を多用して伝えるべきときもあります。たとえば複数の企業が参画するプロジェクトでは、数字ベースで他社を明示的に攻撃すべきではない場合があります。そうしなければ信頼関係を損ね、仕事で協力してくれなくなるからです。
たとえば……
「プロジェクトの進捗が芳しくありません」
「全体スケジュールを確認すると、主な遅延箇所は○○領域のように見えます」
「A社様ご担当範囲だと理解しているのですが、こちら検討はされていて結論は出ているものの、内容精査と関係各位への伝達がしきれていないという理解なのですが、あっていますでしょうか」
のように、やるべきことは「やっている&進んでいる感」を出してあげることです。相手の顔に泥を塗らない、とも言います。
ポイント3. カタカナ語を避ける
相手にとってわかりにくいと思われるカタカナ語の乱用は避けます。カタカナ語は、言い手にはなにか良いことを言っているような気分になっても、相手に具体的なイメージが伝わらないことがあるためです。
・×:グローバリゼーションの推進
・○:海外売上比率の伸びに応じた本社体制の再構築、など
・×:APIベースのデジタルエコシステムを通じたカスタマーエクスペリエンスの向上
・○:業務提携による社外データ活用を通じたお客様満足度向上、など
カタカナ語を具体的な言葉に置き換えることで、読んですぐに理解できる文章になったはずです。とくに、口頭でのカタカナ語はより混乱を招きやすいので意識して避けた方が良いでしょう。
ただしこれも、相手や話題によってはカタカナ語を使ったほうが伝わりやすい場合があります。
たとえば外資系やスタートアップなど、カタカナ語でコミュニケーションが円滑に進む企業の人が相手なら、 カタカナ語のほうが受け入れられやすいでしょう。むしろカタカナ語が標準の組織風土なので、わざわざ日本語に直して言うと煙たがられることもあります。
また、IT系やマーケティングの話題のときはカタカナ語のほうが良い場合が多いです。よく使う専門用語の多くがカタカナ語のため、カタカナ語がデファクトスタンダード(事実上の標準)になっているからです(参考:正直ウザい!? 外資系コンサルが使うビジネス用語5つ)。
相手や背景の見極めが、無駄な言い回しを回避する
「残念な言葉」は基本は避けるほうが安全です。しかし相手のキャラクター・話題・組織文化などによってあえて使うべきときもあります。
見極めや使い分けは難しいですが、常に「この言い方は、相手に伝わりやすいのか?」を意識することです。
言葉は相手に伝わってなんぼ。自分の話しやすさや話しているときの気持ちよさは、相手への伝わりやすさとは別物です。相手が理解・納得しやすい表現を使って、誤解を生む言い回しを断捨離していきましょう。
以上、「あいまい、冗長な伝え方の無駄」というテーマで最前線からお伝えしました。