本コラムは日本実業出版社が発行、エヌ・ジェイ出版販売株式会社が販売する企業向け直販月刊誌「企業実務」内に掲載されているコラムを転載したものです。
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2018/09/27 08:44
企業の経理・総務担当者が職場で直面する、規定集・法規集などに答えが見当たらない疑問、状況がレアケースすぎてそのまま規定を当てはめていいのかどうか迷う悩みに、プロの実務家・専門家が答えます!
※本コラムの内容について※
本コラムは、月刊「企業実務」内で連載されている同名の連載を再編集したものであり、関連法規・規定等については公開時点のものに準拠しています。
春休みのイベントで学生アルバイトを多数集める必要があり、その取りまとめを大学生の子どものいる社員に依頼しました。その社員に紹介料1万円を支給したいのですが、給与扱いとして処理すべきものでしょうか。
人手不足が顕著になるなか、社員のつてをたよってアルバイトを集めてもらう、というケースは増えているようです。このとき、紹介料にあたるものを社員に対して給料として支払うと給与課税されてしまうし、1回5000円、1万円といった単位なので、給料とは別に報酬として支払いたい、という経営者の声も聞きます。
紹介料について給与とは別に報酬として支払い、受け取った側は給与所得ではなく雑所得として処理することは、税務上は成り立ちます。
ところが、こうした支払いは、職業安定法40条に抵触する、という問題があります。「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない」という規定があるからです。
結局のところ、社員にそうした手をわずらわせたことについても、給与所得として処理するのが無難です。直接的な報酬として支払うよりは、たとえば賞与の査定項目に加えて支給額に上乗せするなど、形式的には賞与に合算して支給する方法をとるのが、手間もかからず現実的といえるでしょう(企業実務 17年3月号より転載)。
大手税理士法人を経て紀尾井町国際会計事務所を設立、同法人代表に就任。事業計画作成、金融機関との関係性構築による資金調達、税務調査対策コンサルティング、月次決算業務等に従事。
従業員100名のサービス業の総務部に勤務しています。節税と役員退職金の原資確保を目的として会社が支払っている生命保険料が高すぎるように思います。効果的な法人契約の見直しの仕方があれば教えてください。
まずは現在加入している保険契約の内容について整理し、一覧表にまとめてみましょう。役員の誰を被保険者として、どんな保険に加入しているか、保険料と保険金、解約返戻金はいくらに設定しているか、今後、何か起 こったらいくら支給されることになるのか推移を確認できるようにするのです。
そして、それぞれの金額が、役員が在職中に亡くなったときの死亡退職金、あるいは解約して生存退職金の原資として適切かを検討することになります。
中小企業でありがちなのが、余裕があるときに就任した役員については保険に加入しているものの、社業が厳しいときに就任した役員については加入しておらず、設定している保険金額もばらばらでバランスがとれていない、といった状態です。
そして、一覧表をもとに、いまの加入状況が適切か、保険について詳しい専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。会社に出入りしている生命保険の営業担当者は1人ではないでしょうから、直接の担当者以外も含めて、最低3人には聞いてみることです。病気の治療について不安があるときに担当医師以外のセカンドオピニオンを求めるのと同じようなやり方です。
優秀な営業担当者は、法人契約を見ながら経営者の個人契約がどうなっているか、それで事業承継に支障が生じないか、といったことまで考えます。複数の意見を求めることで、どの担当者が何を重視してその保険を提案しているかがわかります。
なお、死亡時も含めた退職金原資としてのほかに、節税対策として生命保険を利用していることもあります。節税対策として適切かどうかについては、作成した一覧表をもとに、顧問税理士に確認してもらうとよいでしょう。可能であれば金融のプロである生命保険の営業担当者と税務のプロである顧問税理士を同席させて検討する ことをお勧めします(企業実務 17年3月号より転載)。
イーエフピー株式会社代表取締役社長。生命保険営業でカリスマ的な実績をあげたのち、中小、ベンチャー企業の売上げを伸ばすための営業コンサルティング事業を展開。