人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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浅虫温泉の由来

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2018/08/27 13:20

やや前のことになるが、青森県の浅虫温泉に行ってきた。新幹線の新青森駅から奥羽本線で1駅乗って青森駅に行き、そこから旧東北本線を引き継いだ、第三セクターの青い森鉄道で6駅目が浅虫温泉駅である。

しかし「浅虫温泉」というのは気になる地名だ。というのも、「浅い虫」という名づけが今一つ意味が解らない。帰宅後に調べてみると、戦国時代には「麻蒸湯」と書いて「あさむしのゆ」と読んでいたらしく、もともとは温泉の湯壺で麻を蒸していたことに因むという説が有力なようだ。

江戸時代後期の紀行家・菅江真澄によると「をりをり火のわざはひにあへれば、火にしたがふ文字をいみて、浅虫とは近き世にいへる」とあり、火事のために「火」とは関係ない漢字に変えたという。

最近は虫を嫌う人が多いが、そもそも「虫」には悪い意味はない。繁殖力が高い昆虫は、生命力が旺盛なことをあらわす象徴でもあった。

青森県には「悪虫」という名字もある。アイヌ語由来の地名に漢字を当てたもので、「悪」も「悪い」ではなく、本来は「強い」という意味で、源義朝の長男義平のように自ら「悪源太義平」(=強い源氏の長男の義平)と名乗った武将もいるくらいだ。

名字も地名も、今使われている漢字の意味にあまりとらわれないほうがいい。

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