いまは、営業担当者の人間関係や製品の良さだけで売れる時代ではありません。精一杯がんばっても思うように実績があがらないなか、古いタイプの上司の理不尽とも思えるプレッシャーにうんざりしたり、「自分は営業志望じゃないしそもそも向いていない」と働きがいを見出せなくなったりする営業担当者もたくさんいます。
そうした人たちに向けて書かれたのが、高城幸司さんの『営業は必ず君の武器になる』です。
リクルートで6期トップセールスマンに輝き「伝説」と呼ばれた高城さんも本来は「営業嫌い」で、営業に配属されたときは絶望感のあまりすぐに転職を考えたほどでした。厳しい売上目標にも苦しみました。
しかし、できる先輩の行動を真似たり自ら創意工夫したりすることによって営業職の魅力に気づき、「こんなにも働きがいのある仕事はない」とまで考えるようになったそうです。
「売れない時代の営業」は理不尽な上司や厳しい売上目標とどう付き合っていけばいいのか。高城さんの考えを教えてもらいましょう。
売上金額よりもプロセスにこだわりを
営業にとって「売上目標」は避けられない指標であることに間違いはありません。しかし、その「金額」だけを追いかけるあまり、プレッシャーにつぶされてしまうのはもったいないことです。目標と言ってもしょせんは会社が勝手に決めた数字ですし、さらに言えば、与えられた数字は一定期間でリセットされ、永遠に続くものでもないからです。
では何を重視すべきか。目標金額そのものを意識するよりも、達成するためのKPI(key Performance Indicator:主要業績評価指標)となる行動を定めてそれをクリアすることにこだわるべきだ、と高城さんはアドバイスします。KPIは、目標を達成するために点検すべき指標のことで、営業なら提案数や新規リストアップ数などを、取り扱う商品やサービスの特徴に合わせて設定します。
業種や商品によって指標は大きく異なりますが、たとえば「1か月の売上目標500万円を達成するための行動」を考えたとき、経験や前例から、次のようなKPIが設定できるでしょう。
●売上500万円を達成するために必要なのは……
・見積り提出件数=15件以上
・サンプル商品発送数=50社以上
・新規訪問件数=30社以上
目先の売上が上がった、下がったと一喜一憂せずに、これらの指標をクリアすべく行動するのです。検証を重ねれば指標も洗練されていき、他の仕事にも応用することによって営業としての成長にもつながります。
「近視眼的上司」は無視していい
また、これがあると、上司から「今月はいくら売れるの? えっ、100万円しか売れない? 何をやっているのだ!」言われたときに、「500万円売るためには30社の新規訪問が必要です。すでに20社済ませています」と答えられます。上司によっては、「やることはやっているんだな。来月に期待しているぞ」と納得してくれるでしょう。
ただ残念ながら、目先の売上のことだけをとやかく言うダメ上司もいます。
「今月の売上はどうなってる? どうして足りないんだ。困るよ、部長に報告できないだろ。どうにかして売上つくってくれ」
こうした近視眼的な上司とはどう付き合うべきでしょうか。高城さんの答えは次の通りです。
答えは簡単です。そんな上司のプレッシャーなど気にするな。無茶な要求など無視すべし。
もちろん、表面上は適当に「頑張ります」とでも言って、努力をするふりだけはしておきましょう。間違っても「そんな無茶な要求はしないでください。間違っていると思います」などと言わないように。そんな対決姿勢は時間の無駄。上司なんていつかは変わるものです。自分なりのやるべきことがわかっているなら、自分を信じて行動しましょう。(『営業は必ず君の武器になる』186ページ)