皆さんの会社は、儲かっていますか?

じつは、日本の企業は意外に儲かっています。日本で登記されている企業の経常利益の合計は、2016年度で75兆円もあります。しかも14年度から3年連続で過去最高を更新しているのです。

しかし、そうした景気の良さを実感できる人はそれほど多くないはずです。なぜなら、個別にみると黒字企業の割合はおよそ3分の1しかなく、残りの3分の2の企業は赤字だからです。

加えて、勤労者のほとんどが中小零細企業に勤めていることを考えると、「ウチは儲かってます!」と自信を持って答えられるサラリーマンは、かなりの少数派なのではないでしょうか。

「利益を出すには、まず儲かる商品があること、そして儲けを生み出し続ける仕組みと仕掛けが必要です。日本の多くの企業に圧倒的に欠けているのはこの点です」と、ビジネスコンサルタントの山崎将志さんはコメントしています。

書籍『「儲かる仕組み」の思考法 いま、利益を出す会社は何をしているのか』は、山崎さんのこのような問題意識から生まれました。私たちの身近にあるビジネスモデルの独特な構造や工夫を通して、企業が利益をあげるにはどんな方法があるのかを考え、読者が携わるビジネスを上向かせるヒントが書かれています。

急増するコインランドリー、儲かっている?

本書に登場する「儲かる事例」を1つあげてみましょう。

最近、コインランドリーが増えていると感じませんか? 実際にその数は1996年からは右肩上がりで増えていて、2015年末時点で18,000店と、20年前と比べて1.8倍だそうです。この状況に注目したのか、18年3月にはコンビニ大手のファミリーマートもコインランドリー事業に参入すると発表しました。

興味を持った山崎さんは、都内や近郊のロードサイドにある店舗を見て回りました。見学のためと、「ある機能」がついているかどうかを確認するためです。「ある機能」とは、山崎さんが考える「コインランドリーの売上を増やす機能」です。残念ながら、見た限りではその機能がついているコインランドリーは無かったそうですが。

その機能によってなぜ売り上げがあがると考えたのでしょうか。タネ明かしをする前に、山崎さんの気づきのきっかけを紹介します。

起業家でもある山崎さんは、2005年に「5円コピー」というサービスを始めました。コンビニなどにある「セルフコピーサービス」と同じですが、当時それらの価格設定は、A4白黒で10円、カラー60円でした。

そのサービスを半額で提供しようというのが「5円コピー」です。このビジネスは周囲の予想を裏切り(?)、まずまず儲かるものになりました(ちなみに、山崎さんは以前から「価格を半額にすると売上点数が5倍になる、つまり売上金額が2.5倍になる事象」に注目していましたが、「5円コピー」はまさしくその通りになったそうです!)。

違う視点から需要を掘り起こす

少しずつビジネスが拡大するうちに、取引先から、コピー機に「ある機能」をつけてほしいという声が上がり始めました。

それは「領収書発行機能」でした。「5円コピー」を設置しているスーパーの担当者から、領収書の発行を求める客が時々あり、その都度手領収書を手書きする手間を省きたい、という要望が寄せられたのです。

安くはないコストがかかるため迷ったそうですが、お客様の声は無視できない、ということで、まずはいくつかのコピー機に領収書発行機能をつけてテストしました。すると、「領収書を必要とする人は1回あたりの利用枚数が多い」ということが明らかになりました。

たとえばマンションの自治会やPTAの集まりのための資料は、まとまった枚数のコピーが必要です。これらは自宅のプリンタでも出力できますが、インク代を正確に計算できないため身銭を切る羽目になることが多い。しかし、領収書があれば躊躇なく経費として請求できます。

考えてみれば、コピー機が置けない飲食店や美容室、建設現場などの職場で働く人にとっても、簡単に経費精算でき、しかも他より安いコピーサービスは喜ばれるはずです。

意外なところに儲けのヒントはある

さて、コインランドリーです。コインランドリーの客も個人客だけではないでしょう。たとえば、流行りの「民泊」を営む人は、シーツなどの大物を洗ったり、たくさんの洗濯物を大型乾燥機でスピーディーに仕上げたいと思うはずです。領収書が出れば、事業の経費として適切に申告できます。

また、建設現場などで着用するユニフォームを会社の経費で洗濯することを考える社長もいるかもしれません。人手不足のいま、いい福利厚生サービスになるのではないでしょうか。

要するに、領収書発行機能があることによって「経費精算できるなら使う」という需要を掘り起こせるのです。これは当然、プライベートで使う客よりも大口の利用になる可能性が高い。したがって売上が上がる、ということです。

山崎さんも、「5円コピー」を始めたときはそのことに気がついていませんでした。コピーを取るのに領収書が必要になる状況を想像することができなかったのです。

結局のところ、個人の経験や好み、ライフスタイルや価値観は多様化し、世の中は人それぞれ、いろいろな人たちがいるのです。だから、たとえささやきレベルのものであっても、市場の小さな声に耳を傾け、まずは大失敗しない範囲でやってみる。そこで初めて発見があり、新しいビジネスチャンスの種が見つかるのです。
(32ページ)

山崎さんは取引先の声を聞き、とりあえずやってみることで「儲かるヒント」を見つけることができたのでした。そしてそのヒントが違うビジネスにも活かせないか考える。そうした経験の積み重ねが、「儲かる仕組みの思考法」を身につけるベースになるのかもしれません。


ビジネスには「これをやれば必ず利益が出る」という法則は存在しません。しかし、いまの時点で利益を出している企業や、「儲かっているビジネスモデル」があることも事実です。本書は、そうした好調なビジネスの「儲けの仕組み」や「考え方」を抽出し、読者に対して「利益を生み出すヒント」を提供します。

明日のビジネスに役立つ、思いがけないヒントが見つかるかもしれません。