一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第1回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。初回は、「文章を書くことが苦手」な理由とその解決策について。
文章って「何」を「どう」書けば正解なの?
「このなかで『自分は文章を書くのが得意です』という方がいたら手を挙げてください」
講演や研修、セミナーの開始直後に、私はよくこの質問をします。100人いる会場でどれくらい手が挙がると思いますか? せいぜい1人か2人。少ないときは0人です。
それにしても、なぜここまで手が挙がらないのでしょうか。その理由は「文章の書き方を習ったことがないから」です。日本の国語教育は読解力が中心で、文章作成のスキル習得にあまり力を入れていません。文法や漢字、品詞、熟語などを断片的に学びこそしますが、「読む人に伝わる文章の書き方」を体系立てて教えてはくれません。
それにもかかわらず、日記、作文、感想文、レポートなど、私たちは文章を書かされ続けてきました。そして、書くたびに苦労を強いられ……、うまく書けたかどうかもわからず……、先生からたいしたフィードバックももらえず……、少しずつ自信を失っていった……のではないでしょうか(私自身がそうでした)。
とはいえ、学校の先生を責めることはできません。なぜなら、先生たちもまた“誰からも書き方を学んでこなかった”からです。
こうした背景は、現在、私が「文章の書き方の講師」をしている理由とも直結しています。文章を書くことが嫌いな人や苦手な人たちに<書き方の基本とコツ>を身につけてもらったうえで、彼ら彼女らに「文章を書くことって楽しい!」と思ってもらうことが、私に与えられたミッションです。
コツを知らないと、文章の上達はできない
ときどき「文章は書き続ければ必ずうまくなる」という声を耳にします。たしかに量を書くことは大切ですが、書く“だけ”では、思うような上達は見込めないでしょう。スポーツで考えると、すぐにわかります。たとえばテニス。あなたがいくらたくさんボールを打ち続けても、そもそものフォームが崩れていたらどうでしょう。悪いフォームで打ち続けるため、半年経っても一年経っても、一向にテニスが上達していないかもしれません。
一方で、錦織圭選手から10分だけフォーム改善のアドバイスを受けたとしたらどうでしょう。おそらく、その直後から見違えるほどフォームや球筋に変化が出るのではないでしょうか。そのアドバイスを機に、飛躍的にテニスが上達する人もいるはずです。もちろん、いいフォームでたくさんボールを打ち続ければ、一層の上達が見込めるでしょう。
これと同じことが、文章の書き方にもいえます。やみくもに文章を書き続けているだけでは、なかなか文章力は上達していきません。大事なのは現時点での自分の弱点を把握したうえで、その弱点を克服すべく<書き方の基本とコツ>を身につけることです。
1. 基本&コツが身についていない × 量を書く = 上達しない
2. 基本&コツが身についている × 量を書く = 上達する
まずは、この理屈を理解しておく必要があります。文章力を高めたい人が目指すべきは、言うまでもなく②です。安心してください。②へ行きたい人たちのためにこの連載が存在します。この連載を通じて、<書き方の基本とコツ>を自分のものにしてください。
「書くことが苦手」でも、実は75%の伸びしろがある!
次回以降、具体的な書き方ノウハウをご紹介していきますが、その前に一点だけお伝えしておきたいことがあります。それは、文章作成のプロセスについてです。多くの人が「文章作成=文章を書くこと」だと思っていますが、実際には、そうではありません。
以下は、私が考える「文章作成のプロセス」です。
段階1:情報を集める
段階2:書く前の準備をする
段階3:文章を書く
段階4:文章を推敲する&直す
この4段階を見渡したとき、「文章を書く」という行為が段階3だけ、つまり、全体の25%程度ということが理解できるはずです。仮にあなたが、残りの段階1、2、4について、これまでほとんど意識していなかったとしたら、それは大いに喜ぶべきことです。裏を返せば、残り75%分の“伸びしろ”がある、ということだからです。次回以降の連載では、段階1〜4でそれぞれ必要なスキルやノウハウをお届けしていきます。どうぞお楽しみに。