日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2017/11/14 09:51
電車で4時間もかけて益子に行った目的は、陶器市ではなく益子町生田目を訪れるためだ。
「なばため」と読む名字には「生田目」「青天目」「生天目」「名畑目」など色々な書き方がある。さらに読みも「なばため」と「なまため」の2通りがあり、漢字と読み方が一致しないものが多いため、まさに混乱状態だ。
NHK「日本人のおなまえっ!」でも紹介したように、これらの名字のルーツとなったのが、栃木県益子町にある「生田目」という地名。ここの読み方は「なばため」なので、「生田目」と書いて「なばため」と読むのが一連の名字群の大元だと考えられる。漢字に合わせて読みが「なまため」となったり、「なばため」という読み方に合わせて漢字が変化したりした結果、多くのバリエーションが生まれたものだ。
それでは、もともとの「なばため」の語源はなんだろうか。「なばる=隠す」と「なばえる=傾斜する」いう2つの可能性があり、収録では両方紹介したのたが、実際には「隠し田」のみが放送された。そこで、実際に現地を訪れてどういう場所かを確認してみた。
生田目は小貝川の東岸。川岸には水田が広がっているが、ここはかつての氾濫野で、水田化されたのはかなりあとのことだろう。実際の集落は山の裾野から斜面にかけてで、生田目公民館や高●神社(たかおじんじゃ、●は雨かんむりに+龍)も斜面を少し上ったところにあった。そして、公民館の裏手には放棄された棚田の跡があり、これが「なばため」の由来ではないだろうか。
だとすると、隠し田というにはあまりに集落に近く、傾斜地につくられた田というのが妥当なような気がする。「目」は境目のことで、「生田目」とは傾斜地の田と平地の境い目にある集落と考えてはどうだろうか。