なぜ、「コミュニケーション能力」は重要なの?
『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」は どう身につければいいのか?』(日本実業出版社)は、月間200万PVの人気サイト「Books&Apps」を運営する安達裕哉さんが「本当のコミュニケーション能力」の正体や、その身につけ方を語った本。1000社・8000人以上とともに仕事をしてきた経験に裏打ちされた鋭い指摘が満載です。
近年、新卒採用時に企業が学生に求める能力の代表が「コミュニケーション能力」となっているという。実際に「コミュニケーション能力」は13年連続で企業が新卒学生に求める能力として1位となっている(2016年・経団連調べ)。(はじめにより)
こう本書に書かれているように、新卒にかぎらず、中途採用においても、「コミュニケーション能力(以降、コミュ力)」を大きな判断材料としている企業は少なくありません。
なぜ現代ではこれほど「コミュ力」が重視されるのでしょうか。本書から、その答えを探してみましょう。
就活で「コミュニケーション能力」が重視される理由
その答えを知るうえで、まず「企業が求めるコミュニケーション」について考えてみます。
多くの学生は、就職活動の面接で企業から「自分のコミュ力の高さを証明するエピソード」を求められたとき、
「場を盛り上げるのが得意です」
「社交的で友だちがたくさんいます」
「社対面の人と人見知りせず話すことができます」
など、「一緒にいて楽しい、心地いい」という、いわゆる性質的な「コミュ力」の高さをアピールします。
しかし、企業が求めているのは「一緒にいて楽しい」ことではなく、「一緒に仕事をして成果が出る」ことです。つまり、成果を出すためのコミュ力こそが重要なのです。具体的には「自分のアウトプットを誰かに利用してもらうための力」だと安達さんは本書の中で述べています。
たとえば、あなたが営業用のチラシを作成するとします。ただ、それを使うのはあなただけではありません。同僚や上司、他部門の人、さらには他社の人がほかの人に製品を紹介するために使うこともあるでしょう。そう考えると、ひとりだけの力でつくり上げようとするのではなく、「自分のアウトプットをほかの人がうまく利用できるか」を意識し、対話や質問を重ね、それぞれが「成果を出せる」結果に導いていく必要があります。
そしてそこには、コミュニケーションが必ず必要になります。
これはあらゆる職種にいえることです。プログラマーだとしたら、作成したプログラムの仕様を、自分以外の社員にアウトプットし、情報を利用してもらい、最終的にお客さんに届くようにすることで成果につながります。
つまり、仕事における成果とは、自分のアウトプットを誰かに利用してもらってはじめて生み出せるもの。企業がコミュ力の高い人材を求める理由はここにあります。
「企業が採用したい人」は「コミュニケーション能力の高い専門家」に変わってきている
「コミュ力」が企業から求められだしたのとともに、「採りたい人物像」も大きく変化しています。政府の統計によると1990年代との比較では、「コミュニケーション能力」のほかに、「積極性、チャレンジ精神、行動力」「仕事に対する熱意・意欲、向上心」を求める割合が大きく増加しています(「平成25年版厚生労働白書」より)。
では、具体的に企業の「採りたい人物像」はどのようなものでしょうか。
1 「忠誠心の高い人物」よりも、「ネットワークを築くことのできるコミュニケーション能力を持つ人物」
1970年に“モーレツ社員”という言葉が流行ったように、ひと昔前は「会社への忠誠心の高い人」「全部の時間を会社のために使うこと」が好まれていました。しかし、現在では副業や社会外人脈、SNSでの発信といった、会社以外へ目を向け新たな視点を取り入れることが許容され、むしろこれらのことを推奨する会社も増えつつあります。
企業の求めるものは、閉鎖的な「忠誠心」から、オープンな「ネットワークを築くことのできるコミュ力」に、シフトしつつあるのです。