前回、文教堂赤羽店さんでお話しをうかがい、とても刺激を受けた私。もっと本屋さんのお話が聞きたくなって、お世話になっている書店様めぐりをすることにしました! 今後そのレポートを(不定期ですが)アップしていきます。
今回は埼玉は新越谷の旭屋書店さんです。(文:日本実業出版社 桑田)
仕事の帰り道、ついつい立ち寄りたくなる本屋さん
JR南越谷駅の改札を出てすぐ、地域一番のラインナップでお客様を迎えてくれるのが、旭屋書店新越谷店。同店のビジネス書担当者さんにお話をうかがいました。
―店内を拝見すると、面陳(雑誌や本を棚に立て、背ではなく表紙を見せて陳列する売り方)されている書籍の割合が多いですね。表紙やタイトルがしっかりと見えるので、お客さんも本を手に取りやすく感じます。
そういっていただけると嬉しいです。私は旭屋書店で働きだして十年以上になるのですが、ずっとコミックス担当だったので、ビジネス書の担当はまだ1年ほどなんですよ。だから、書店員歴が長い割にビジネス書に関しての知識はまだまだで(汗)。棚作りも試行錯誤の、真っ最中です。
―コミックスからビジネス書だと、大きなギャップがあったのでは?
そうですね。中身はもちろんですが、コミックスは新刊やアニメ化した作品など、売れる目安がわかりやすいんです。でも、ビジネス書はなにが売れるのかを予測して、どう売っていけばいいのかを考えるのが、とても難しいなと感じています。
当店は駅の乗降客の来店が多いので、JRで車内広告を出している書籍は切らさないようにしています。また、同じような立地条件の店の売れ筋も参考にしてコーナーをつくっています。あとは、新聞広告やテレビ露出には注意しますね。
―すべてチェックするのは大変ですね。
もちろん広告の内容を全て追うことは難しいのですが、テレビでよく見かける著者さんの本などは大きく展開するようにしています。といっても、どういうきっかけで売れ出すか……という判断はやっぱり難しいのですが。
でも、一番影響が大きいのは、書籍の内容がいかに多くの人に興味をもたれるかですよね。たとえば最近では、文響社さんの『うんこ漢字ドリル』。こどもにとっては、どちらかというと手に取りたくないものだった勉強ドリルに、こどもが大好きな「うんこ」という言葉を使用したことで多くの読者に響いた成功例だと思います。
当店でもとても売れていて、売上の上位が、「うんこ、うんこ、うんこ……」なんてことになっています(笑)。
―(笑)。客層としてはどのようなお客様が多いですか?
すぐそばが東武線とJRの乗り換え駅なので、電車を利用される会社員や学生さんが客層としては多いですね。だから休日よりも平日の方が、お客様が多いです。
本の売行きは、世の中の動きに連動しているのかも
―ビジネス書の売行きはいかがですか?
ざっくりしたジャンルでいうと「話し方」に関する本は、新刊も既刊もコンスタントに売れている気がします。
経営者やリーダー向けというより、そこまでは難しくない、若い人が日頃不安に思っていることに答えてくれるビジネス書が売れている気がします。
―そのなかでもとくに売れているビジネス書は?
最近では、堀江貴文さんの『多動力』(幻冬舎:刊)がすごく売れていますね。一つのことをコツコツとやる時代は終わり、これからは、あらゆる業界の壁を軽やかに飛び越える「多動力」が必須スキルとなる……みたいな内容なんですが。まさに今、堀江さんが提唱している生き方が、多くの人にとって重要なスキルとなる時代がきているのかもしれません。
日本実業出版社さんの『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』も、新刊で入ってきたときから着実に売れています。少し波もあって、売行きがちょっと止まったかなと思うと、翌日にはまた動きだしたりするので、ずっと展開から外せない本です。人間関係に悩んでいるビジネスパーソンはもちろん、女性も含めて、幅広い世代の方が手に取っているようです。
私自身はだれかと一緒にいるために「いい人」でいなければ……と頑張るタイプではないのですが、たまにもっと社交的になった方がいいんだろうなと思うときもあります。そんなとき、この本を読んで、一人でいることが気楽なら、それはそれでいいんだと、少しほっとしたりしています。頑張ってストレスをためるよりは、自分らしく自然体でいることが大切ですよね。
―新越谷店さんに来店されるお客様にここを見てほしいところはありますか?
お客様の中には「○○の本がほしい」と思ってこられる方もいらっしゃいますが、どちらかといえば「なにかいい本はないかな」とフラッと立ち寄られる方の方が多いと思うんです。だから、書籍の内容やポイントを端的に説明するPOPやパネルを、書籍の近くにつけて、お客様がより多くの本の魅力に触れることのできるように意識しています。
また、今お店の入口近くで展開している「出版社対抗選手権」のように旭屋書店全体でテーマを決めて、書籍をお客様に提案することも積極的に行なっています。
まだまだ、ビジネス書担当として「コレ!」というものをもてていないのが現状ですが、今後も出版社やお客様からのアドバイスをいただきつつ、ビジネス書棚を盛り上げていこうと思います!