「習慣は、行動習慣と身体習慣、それに思考習慣の3つに分類できます」と古川さん。3つめの思考習慣は、私たちの感情に影響を与えるフィルターのようなもの。そして、結果を出し続ける達人たちの思考習慣には、9つの特徴があるそうです。
連載(全6回予定)「デキる! といわれるシゴト習慣術」は、“習慣化コンサルタント”の古川武士さんによる、よい習慣を身につけたいビジネスパーソンのためのコラムです。
第5回 スゴイ人たちの「9つの思考習慣」とは?
世の中にはストレスがたまりやすい人とそうではない人がいます。私は、その違いを、思考パターンの違いによるものだと考えています。
たとえば朝、出会った人にあいさつしたとき、まったく応答がなかったとします。そのことに対して、「この人は自分に強い敵意を持っている」と考える人と、「きっと今のあいさつは聞こえなかったんだろう」と考える人がいます。前者のような人は、当然ストレスを抱えがちでしょう。
フィルターを通してしか世界を見ることはできない
心理学の世界で「認知のゆがみ」といいますが、私たちが外部の何かに対して抱く感情は、個人がそれぞれの認知のフィルターを通した結果得られるもので、決して外部の事実や出来事そのものではありません。ある人のことを苦手だと思う人もいれば好きだと思う人もいます。私たちは対象を、偏ったフィルターを通し、歪曲して見ているに過ぎないのです。
このことを私は「一次体験と二次体験」という区別で説明することが多いのですが、一次体験というのは「あるがまま」の世界であり、出来事であり、自分自身です。「世界」とは何かと私たちが考えたとき、「世界」に関する情報が膨大にありすぎてつかみきれないので、全部でなく一部を、しかもフィルターをかけて見るしかない。これが二次体験です。私たちはこの二次体験を、あたかも事実であるかのように認知してしまう。「ある」ことを「あるがまま」には捉えられないのです。
この二次体験をつくり出すフィルターを、私は「思考習慣」と呼んでいます。
ストレスを抱えがちで「イライラ」や「クヨクヨ」を感じることが多い人は、そうした自分を変えたい、と願います。しかし、自分や、自分の感情を直接変えようとするのは容易ではありません。それよりも、認知のフィルターである思考習慣をコントロールすることを考えるほうが、効果的だと思います。
達人たちの思考習慣
私は、以上のような考え方から、いろいろな分野で卓越した結果を残し続けている人たちが、どのような思考習慣を持っているかを研究しました。対象はメジャーリーガーのイチロー選手、羽生善治さん、孫正義さん、元東レ研究所の佐々木常夫さんなどですが、こうした人たちの思考習慣を、われわれ一般のビジネスパーソンが取り入れることで、ネガティブな思考に陥らずに、積極的な人生を送る助けになるのではないか、と考えたのです。
その結果、達人たちの思考習慣には多くの共通点があることに気がつきました。数多くの逆境を乗り越えて成功し続けてきた彼らに共通する思考パターンをまとめたのが、以下の「9つの思考習慣」です。
1.等身大の自分を受け入れる
彼らは、長所も短所も含めて、等身大の自分を受け入れています。それによって、適切な自信を持つことができます。
自己否定感が強い人は、ミスを犯したとき、それがちょっとしたものであっても「だから私はダメなんだ」と自分全体を否定してしまいます。実際には行動が間違っていただけ、少しスキルが足りなかっただけなのに、ミスの原因を自己認識における「ダメな自分」に求めてしまうのです。