そして今回、待望の第二弾『1人でできる子になる「テキトー母さん」流 子育てのコツ』の発売を記念して、著者であり、30年間に及ぶ教育現場での経験をもとに講演家として活動中の立石美津子さんに、あらためて「テキトー母さん」流の子育てのポイントや、子育て中のお母さんへのメッセージをお聞きしました。(聞き手:日本実業出版社)
お母さんはもっと「テキトー」になっていい!?
――前作を知らない方のために、「テキトー母さん」とはどういったお母さんのことなのか、あらためて教えていただけますか?
「テキトー」という言葉を辞書で調べてみると「いいかげん」「なげやり」と、「ほどよい」「適度な」という2つの意味があります。この本で使っている「テキトー」の意味は後者です。
具体的に言うと、テキトー母さんとは、3つのことを満たしている人だと思っています。
1つ目が「期待しない」。子どもの成長や能力に対して期待しすぎてハードルを上げると、子どもも親もしんどいです。
2つ目が「よその子や兄弟と比べない」。よその子どもと比較するのではなく、子ども自身の昔と今の成長を比較する。
最後が「あるがままを受け入れる」。いい子でなくても、わがままを言っても、子どものあるがままを受け入れる。世界中を敵に回しても子どもの味方になれるということです。
子どもに過度な期待をせず、よその子や兄弟と比べず、あるがままを受け入れる。そして“ほどよい加減”の子育てをしているのが、「テキトー母さん」です。
――前作『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』は多くのお母さんから支持されましたが、なぜだと思われますか?
実は、私自身が徹底的な過保護・過干渉の完璧主義な母親に育てられ、母がいないと何もできない子どもで、自分に自信がもてず苦しみました。
完璧主義なお母さんというのは、3ヶ月になったら絶対に首が座らなくてはいけない、1歳になったら1人で立てるようにならなければいけない……と育児本の平均値というのを常に気にしています。そして、子どもの発達が平均から遅れていると、「どうして○○ちゃんはできるのに、あなたは……」と、子どもを叱るばかりです。
その結果、子どもは自信を失い、常に人と比べるばかりで満たされることのない大人になってしまいます。もし、子育てに成功と失敗があるとしたら、他人を妬むことなく「自分自身の人生を楽しんで生きる」大人に育つことが成功だと言えるのではないでしょうか。
「元気で毎日生きているだけで十分」ぐらいが、親も子供もストレスを感じないですよね。だからこそ、“いい子”に育てなきゃと一生懸命なあまり疲れてしまっているお母さんにとって、心がラクになる子育てのアドバイスとして「テキトー母さん」が受け入れられたのかもしれません。
5歳児にして人生に自暴自棄……?
――叱られてばかりだと子どもはどうなってしまうんでしょう。
かつて私が経営していた幼児教室に、A君というとても態度の悪い子がいたのですが、5歳児にして自暴自棄になっているんですよ。落ち着きもないし、勉強もできない、幼稚園を脱走する。だから親は叱ってばかりで、幼稚園でも叱られてばかりいました。
ある日、その子が私の教室に入ってきました。あいかわらず態度が悪いのですけれど、私が怒ってもよけいに頑なになるだけだと思ったので、ささいなことでも褒め続けてみました。
授業前に、「A君、昨日お風呂に入った?」と聞くと、「入った」と言うので、「お風呂入ったんだ、すごいね!先生なんか毎日入らないのに(笑)」「髪もちゃんととかしてるんだ、偉いね」「トイレに行って、手を洗ってきたんだ、立派だね」なんてことを言い続けたら、椅子に座って大人しくできるようになりました。
それは私の授業の時だけだったようですが。褒められて嬉しくなり、もっと褒められたいから、ちゃんとしようとなったのでしょうね。どのようなことでも良いので、良いところを見つけてあげると子どもって変わっていくんです。
怒られてばかりだと、頑張る気もなくしてしまいます。叱ってやる気がでる子はいないです。一見すると困った行動も、見方を変えてみると、子どもが成長するにつれて長所になる可能性があります。