2016年5月24日、衆院本会議にて「改正確定拠出年金法」が成立。主婦や公務員など2600万人が制度対象者として新規追加されたことにより、実質的に現役世代全員が「確定拠出年金制度」を使えるようになりました。また、18年6月には「2020年に2万社」という政府目標が掲げられた企業型確定拠出年金(DC)を導入した企業が3万社を突破するなど、制度のすそ野は急速に拡大しつつあります。

確定拠出年金の運用には節税効果があるため、制度上(「所得があり税金制度が変わらないなら」という前提付きではありますが)確実に得をする投資手段と言えます。

ただし、上記はあくまで「制度上」の話。確定拠出年金で「何に投資するのか」を決めるのはあくまで自分自身なので、「正しい運用知識が身に着いている」ということが前提になります。そこで、マネーの第一人者としてしられる山崎元氏の著書『確定拠出年金の教科書』の内容をもとに、確定拠出年金の基礎知識と商品選びの注意点についてみてみましょう。

まず、確定拠出年金とは何なのか

本題に入る前に、確定拠出年金について説明しましょう。日本の年金制度は、よく「○階建」と建物のようにたとえられます。1階部分のいわば土台となるのが「国民年金」、サラリーマンや公務員が加入している「厚生年金」は2階として例えられます。これらはいずれも「公的年金」となっています。

しかし、1階分しかないよりも3階分まであった方が将来への備えを厚くできるため、個人で年金の積み立てを行う人もいます。こうした個人による積立は「私的年金」とよばれ、本記事で触れる「確定拠出年金」も含まれます。16年5月の改正で専業主婦や公務員も新たに加入できるようになった部分もここに含まれます。

確定拠出年金には「企業型」と「個人型」の2種類があり、企業型では、確定拠出年金制度に加入している会社に入社すると自分も自動的に加入することになります。一方の個人型は自らの意志で加入するものであり、年金制度全体における確定拠出年金の位置づけを図示すると、以下のようになります。

年金制度概念図(厚労省の資料をもとに作成)
年金制度構造の概念図(厚労省の資料をもとに作成)

では、確定拠出年金の具体的な内容についてみてみましょう。「確定拠出年金」と「企業年金(従来の厚生年金基金や確定給付年金など)」との違いは、以下のようになります。

  確定拠出年金制度 企業年金制度
何が確定してる? 拠出額(掛け金) 給付額(将来の受給額)
運用主体 加入者 企業
運用のしくみ

掛け金が決まっており、運用成績次第で給付額が上下

給付額が決まっており、年金数理計算によって掛け金が上下

また、それぞれの主なメリット・デメリットの違いは以下のようになります。

  確定拠出年金制度 企業年金制度
メリット
  • 税制面の優遇が大きい
  • 定年以外の転退職によって不利を被ることがない
  • 年金の受給権が確保される
  • 運用リスクを負わない
  • 給付額が決まっているので、老後の生活設計がしやすい
デメリット
  • 運用成果は自己責任
  • 原則的に、60歳まで引き出しや中途脱退ができない
  • 企業の業績などの影響を受けるため、受給権が不安定
  • 転退職時に資産を持っていくことができない

確定拠出年金制度のメリット・デメリット

それでは、上の表にある確定拠出年金のメリット・デメリットについて、詳しくみていきましょう。