日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2016/05/09 10:28
関東に鈴木町駅という駅がある。あまり知られていないこの駅があるのは京急大師線で、その由来は駅のある地名が鈴木町だからだ。
大晦日から元日にかけては終夜運転される大師線も通常の日中は10分間隔。京急川崎駅1階の京急大師線のホームから、4両編成の電車に乗って2つめの駅が鈴木町駅である。
駅の出口は上りホームのみ。最近では珍しくなった構内踏切を渡って改札を出ると、駅の右手(北側)には巨大な建物がある。入口には遮断機があって警備員もおり、その先には行くことができない。
この建物は味の素の川崎工場だ。それだけではなく、駅の向いは味の素うま味体験館。さらに食品研究所など、この付近一帯は味の素の関連施設だらけである。そもそも、鈴木町駅も昭和19年までは味の素前駅という名称だった。
味の素が創立されたのは明治40年。この年に池田菊苗が昆布からグルタミン酸を発見、これをもとに鈴木三郎助が事業化したのが始まりだ。そして大正3年に川崎工場を設立、以後発展して現在の味の素グループとなった。鈴木町という地名は、味の素の創業者の鈴木三郎助にちなんでいるのだ。
人名にちなむ地名は各国にあるが、日本では近代以降の人名にちなむものは珍しい。