人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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鹿手袋ってどういう意味?

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2016/04/04 15:44

今回取り上げる地名は、埼玉県さいたま市南区にある

埼玉県に「鹿手袋」という変わった地名がある。昨年末にたまたま通りかがって気がついたのだが、そのときは時間がとれず、先日改めて行ってみた。

鹿手袋の場所は、埼玉県さいたま市南区。JR埼京線中浦和駅の近くだ。駅の高架から降りると、駅前の広場には早速「鹿手袋1-1」という案内表示がある。鹿が手袋をする(していた)というのは考えづらく、何かの宛て字だろう、というのは想像できる。

周辺を歩いてみると、マンションの名前に「鹿手」と省略しているものがあった。「鹿手+袋」であれば、なんとなくわかる。

「鹿手」と地名を略して使っているマンション
「鹿手」と地名を略して使っているマンション

あとで調べてみると、今では「鹿手袋」と書いて、文字通り「しかてぶくろ」と読むが、江戸時代は「しってぶくろ」だったとのこと。「ふくろ」というのは、川が大きく湾曲した際、川に囲まれて袋状になった地形を指す。

関東地方では蛇行した川が多く、各地に「袋」のつく地名が残っている。確かに、鹿手袋には川が流れており近くには蛇行した川の痕跡と思われるところもある。この付近はかつて「しって」と呼ばれ、そこにあった川に囲まれた部分が「しってぷくろ」となり、やがて「鹿手袋」という漢字があてられた。そして、漢字の読み方に従って「しかてぶくろ」になったと思われる。

鹿手袋の地で見つけた桜の木
鹿手袋の地で見つけた桜の木
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