人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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羽犬塚駅の駅名の由来

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2016/02/29 09:09

豊臣秀吉の兜(photo by hidesak/fotolia)

西日本新聞にJR鹿児島本線の羽犬塚駅に関する面白い記事があった。羽犬塚駅の所在地は福岡県筑後市。この「羽犬塚」というちょっと変わった地名には伝説があり、市内何か所かには伝説に因む銅像もあるという。

戦国時代、島津攻めのために九州入りした豊臣秀吉は羽根が生えているかのように早く走る犬を連れていたが、この地で死んだために手厚く葬った。そこから、「羽犬塚」という地名になったという。地名伝説としてはかなり新しい時代のものだが、銅像とともに豊臣秀吉の肖像の入ったものもあり、一般的に受け入れられているようだ。

なお、この付近にいた羽根の生えた妖犬を秀吉が退治して葬ったのに由来する、という異説もあるようだ。しかし、この戦いに従軍していた島津氏側の武将の書いた「上井覚兼日記」には「灰塚之町」と書かれている。そもそもここは薩摩街道の要衝で、秀吉が来る前から地名があったはずだ。

「灰塚之町=はいつかのまち」と「羽犬塚町=はいぬづかまち」はきわめて音が近い。九州では「犬」を「いん」と読むことがある。とすると、「はいんつかのまち」が共通の語源で、それに音の近い漢字を宛てたものとみえるが、どうだろうか。

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