名南経営 presents ─vol.12─
マイナンバー導入当初、多くの国民は、この制度が住基カード(住民基本台帳カード)同様に中途半端なものになるのではないかと考えていました。しかしいざスタートしてみると、多少の混乱があるとはいえ、マイナンバーを記入しなければならない書類は多く、今後その利用はますます拡大されていくものと考えられます。
すでに、マイナンバーの利用拡大の布石は打たれています。
「医療ID」との連携
医療や金融の分野では昨年9月の法改正によって活用することが決定しています。特に医療の分野では、マイナンバーと連動した医療IDという別の番号を付与していくことが検討されていますが、これは、昨年改正された個人情報保護法の内容とも符合するものです。
企業はこの個人情報保護法の改正によって、個人情報に関するいわゆるビッグデータを利活用できるようになります。医療分野では、医療IDを軸にした匿名個人情報が医薬品の研究開発等にも用いられることになり、それが新たな治療薬等の開発に貢献することで、国全体の医療費の抑制にもつながる可能性が示唆されています。
他方で、国民に対しては「電子お薬手帳」を普及させようという動きがあります。「電子お薬手帳」によって、個人に処方された薬の情報を複数の医療機関が共有できるため、無駄な医療費支出の削減につながることが期待されています。
たとえば、今年4月以降の診療報酬制度改正後は、「湿布」は最大70枚までしか処方されなくなる予定ですが、電子お薬手帳が普及していれば、午前と午後でそれぞれ違う医療機関に足を運んでも、70枚を超えて処方されることがなくなるわけです。
当然、こうした機能は、来年以降に個人に割り当てられるポータルサイト「マイナポータル」とも連動していくものと考えられます。国民はそのマイナポータルの中で自身の医療情報を把握できると同時に、治療費の管理もできるようになるでしょう。その流れで近い将来、他の先進諸国同様に「マイナポータル」経由で税金の確定申告の手続きができるようになるということもあり得るでしょう。
近い将来、銀行口座と強制的にひも付けられる?
また、金融の分野でも2018年から銀行の口座に対して任意でマイナンバーを付与する方向性が示されましたが、未来永劫、任意ということは考え難く、近い将来、強制的に記載することが求められるでしょう。国はそれを生活保護の不正受給防止や国民年金の保険料の未納防止等に活用するものと容易に推測でき、刻々とマイナンバーの「包囲網」が敷かれているように感じます。
以上のように、マイナンバーを私たちの生活とつなげることで多くの国民の利便性が増しますが、それ以上に国も、適切に税収を確保できるとともに、無駄な社会保障費を抑制することができます。加えて、統一したプラットフォームで利活用できるようになれば、それぞれの行政機関ごとに要していた多額のシステム保守費用を削減でき、国や地方の財政にも貢献するでしょう。
もはや、時代の趨勢と考えて、マイナンバーと向き合わなければならない時代に突入したと考えるべきでしょう。
(終わり)
【執筆者プロフィール】
社会保険労務士法人 名南経営
社会保険労務士 服部英治
1972年岐阜県出身。大手社会保険労務士事務所を経て1999年に入社。名南コンサルティングネットワークのトップコンサルタントの一人として、全国各地でクライアント企業の労務コンプライアンス支援(労務監査)、IPO支援、人事制度改定支援、各種人事労務相談等に応じている。医療福祉業界や運送業界の人事労務に精通、他にも海外人事労務等を得意としている。