名南経営 presents ─vol.10─
平成28年1月より運用が始まったマイナンバー。企業のシステム対応が遅れていたり、いまだに通知カードを受け取れず自分のマイナンバーを知らない人がいたりと、混乱がないとはいえない状態でのスタートとなりました。
また、行政機関へ提出する書類についても、当初はマイナンバーの記載が必要とされていた書類が、法令の改正によって記載不要になるなどの変更点が出てきています。
したがって企業の担当者は、これらの情報を随時把握して、書類を作成し提出する際にはマイナンバーの記載が必要かどうかを確認しながら業務を進める必要があります。そこで今回は、当初方針から改正、変更された、法令や取扱いについて解説します。
年末調整に関わる書類
本連載の第7回『マイナンバーで「源泉徴収事務」と「雇用保険事務」はどう変わる?』で、従業員本人に交付する「源泉徴収票」や一定の条件を満たした「扶養控除申告書」は、マイナンバーの記載を省略することができるようになったと解説しました。
これらは年末調整に関わる書類ですが、その後、平成27年12月24日に閣議決定された「平成28年度税制改正の大綱」においてさらに見直しを行うことになり、「配偶者特別控除申告書」「保険料控除申告書」「住宅借入特別控除申告書」についてもマイナンバーの記載を省略できる見込みとなりました。これらは現時点では案であり、これから法令の改正が行われて正式に決定されます。平成28年の年末調整をするまでには確定するものと思われますので、企業の担当者は、今後も関連情報に注意しておくとよいでしょう。
<参考リンク>
マイナンバーの記載を省略する書類一覧(案)(マイナンバー記載の対象書類の見直し)について
雇用保険関係の書類
また、雇用保険関係の書類でも変更が見込まれます。
厚生労働省は、平成27年12月18日付の「雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A(平成27年12月18日版)」において、それ以前の内容を変更しました。この変更には、雇用保険関係の書類では「努力義務」であったマイナンバーの届出が「義務」へ変更されたり、「雇用継続給付」の申請を事業主が行う場合には、事業主が被保険者の代理人として手続きを行うことになるため代理権の確認が必要となるなど、実務的に大きな影響がある内容が盛り込まれていました。
ところが、平成28年1月の本稿執筆時点までに、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(案)が出されました。この省令(案)では、現状では被保険者本人が行うことになっている雇用継続給付の手続きを、原則として事業主を経由して行うこととする改正を行う、とされています。この通り改正されれば、事業主は「個人番号関係事務実施者」となるため、前述した代理権の確認が不要となり、事業主の負担や情報漏洩リスクが軽減されることが見込まれます。
この省令(案)については、平成28年1月23日を期限にパブリックコメントが実施されていますが、改正が順調に行われた場合、平成28年1月下旬には公布・施行されるスケジュールになっています。したがって、本記事が掲載される平成28年2月1日時点で改正されていることが予想されます。
<参考リンク>
雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A(平成27年12月18日版)
雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(案)に関する御意見の募集について(パブリックコメント)
このように、マイナンバーに関する法令や取扱いは、運用開始後も変更されたり、変更が見込まれるものがありますので、今後もこれらの情報に留意していただければと思います。
(次回は2月15日・月曜日に配信予定)
【執筆者プロフィール】
社会保険労務士法人名南経営
社会保険労務士
安藤慎祐
1983年愛知県出身。大学卒業後、上場企業にて6年間人事労務業務に従事。在職中に社会保険労務士を取得し、2012年に社会保険労務士法人名南経営に入社。人事労務相談、就業規則策定、給与計算、調査対応をはじめ様々な業種規模の人事労務業務を専門家としてサポートしている。6年間の人事労務担当者としての経験を活かして、お客様の立場を理解した対応を心がけている。