人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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平方領々家という地名(1)

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2015/11/10 09:58

JR埼京線・指扇駅

埼玉県の地図を見ていたら、さいたま市西区に「平方領々家」という不思議な地名を見つけた。平方が大字等の広域地名とすると、その下の地名は「領々家」となる。領家という地名は各地にあるが、領々家というのは聞いたことがない。

そもそも、領家は高校の日本史の教科書にも登場する歴史用語だ。平安時代中期以降、各地で新たに田畑を開墾して私有する開発領主が登場した。

しかし、こうした私有地は法的に認められたものではないため、朝廷に没収されないように、貴族や有力寺社に荘園として寄進することが多かった。こうすることでその土地は貴族や寺社によって守られ、開発者は在地領主として実際の支配権を確保した。

こうした荘園の寄進先を領家といい、領家の土地は各地にあったことから、領家という地名も各地にみられた。なお、領家がさらにその荘園を上位の貴族などに寄進することもあり、そうした寄進先は本家と呼ばれる。

さて、平方領々家の最寄りの駅はJR埼京線の指扇駅である。駅を降りて北に向かって10分も歩かないうちに、「平方領々家」という電柱の看板をみつけた。たしかに「領々家」と書かれており、これが正式名称のようだ。

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「平方領々家」という電柱の看板

 

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