タイトルに惹かれてこの記事を読みに来た人は、なんらかの形で相続に関与する(もしくは、近々関与することになる)人だと思います。ではここで、次の一文を読んでみてください。
相続税は、税務に関することだから当然、税理士の出番となる。しかし、すべての税理士が相続対策について的確なアドバイスができるかというと答えは否。
実は、税理士の多くが相続税の素人だからである。
(『不動産のプロが教える究極の相続対策』 p.14より。以下、引用は同書から)
これを読んであなたは「いくらなんでも税理士が素人というのはないだろう」と思いましたか? それとも「あー、言われてみれば確かにそうかもね」と思いましたか?
どちらが多いかと言われれば、恐らく前者でしょう。しかし、「プロ大家」として不動産コンサルティングを営む浦田健氏がこう言い切るのも、まったくの無根拠というわけではありません。
浦田氏がそう断言する理由、そして「巷で言われている相続対策のウソ・ホント」「親の家を継いだときの相続ポイント」を前後編に分けて見てみましょう。
不動産のプロが、税のプロを「素人」呼ばわりする理由
浦田氏が「素人」と書いた理由の一つが実際に相続税の実務に携わる機会がある税理士は意外と少ないというものです。
日本国内における税理士の人数は約75500人(2015年8月末現在、日税連のサイトより)。一方、2013年年間における被相続人数(=死亡者数)が約127万人のうち、実際に相続税の課税対象となった被相続人数は約54000人。課税割合は実に4.3%しかありません(国税庁プレスリリースより、PDF)。
もう一つの理由が、相続財産そのものの問題です。上記のリリースより相続財産を割合別にみてみると約半分が土地・家屋などの不動産となっています。不動産の評価額はその広さはもちろんのこと、立地・土地の形・周辺環境等で大きく変動します。そのため、正しい見積もりをだすには相応に高度な知識が必要となり、そのために不動産鑑定士という国家資格が別途存在するほどです。
つまり、税理士は申告に関してはプロだと言えるが、こうした「相続税実務に携わった経験があり」「不動産に関する知識や資格も持っている」ごく一部の税理士以外は、必ずしも「相続税のプロ」とは言えない状況がある。それが、浦田氏が「相続税の素人」という根拠です。
また、後の項目でも触れますが、相続対策として不動産を活用する場合「建てて終わり」ではなく、その後のことまで考えなければなりません。証券や現金といった金融資産関連の相談や実際の申告についてならともかく、不動産の相続対策に関する相談は不動産のプロに行なった方が無難と言えるでしょう。
巷で言われている相続対策のウソ・ホント
その1:資産を守るためのアパ・マン経営のはずが……
ケーススタディとして、以下の話で考えてみましょう。