2015年7月8日、ビジネス評論家であり『合理的なのに愚かな戦略』(日本実業出版社)の著者、ルディー和子氏の講演会が開催されました。テーマは「変化の時代に生き残る企業とは?」。

この講演会は巣鴨信用金庫(東京都豊島区)の役員・管理職研修プログラムの一環として行われたものですが、ここではその一部を、前・後編に分けてお届けします。

(協力:巣鴨信用金庫 文責:日本実業出版社)


 【前篇】

人間は「変われない」

オバマ氏が大統領選挙の時に使ったスローガンから話を始めようと思います。

「チェンジ」。変わっていこうというこのスローガンは、金融危機で閉塞感のただ中にあったアメリカ国民に熱狂的に受け入れられました。しかし、それが失望に変わるまでに、あまり時間はかからなかった。なぜか。それは、選挙演説スピーチを振り返ってみればわかります。

「変化の時代」に生き残る企業とは
「変化の時代」に生き残る企業とは

オバマ氏はこう言いました。「変化をもたらしてくれる人を待っていたり、あるいは、そういった時代が来るのを待っていても、変化は起こるものではない。私たちが待っていたのは私たちなのだ。私たちが求めていた変化は、私たち自身なのだ」

つまり、自分自身が変わらなければ変化はやってこないとはっきり言っていた。でもアメリカ国民は「この人なら変えてくれる」と思ってしまった。自身は変わろうとせず、人頼みだったんです。ここにズレがあった。

会社でもありますよね。変えなければ、と感じてはいても「きっと誰かが変えてくれるだろう」。優秀な新入社員が入ってきて、みんながんばっていると「この世代が変えてくれるだろう」。でも、自分自身が変わろう、ということはあまり考えません。

アメリカ国民がオバマ大統領に失望することになったのは、自分たち自身が変わろうとしなかったからだ、ということも理由のひとつだと言えます。

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日立製作所は、2009年に日本の製造業史上最大の赤字を出しました。8000億円近い巨額の赤字でした。大変な危機ですね。その後に、日本の名だたる電機メーカー8社が相次いで赤字を出すことになったわけですが、日立が最初だった。このインパクトは非常に大きかった。

再建を託されたのは、子会社から呼び戻され社長に就いた川村隆氏でした。彼は辣腕をふるい、2年間で赤字をなくし、その後も驚異的に業績を回復させたわけですが、その主因は、910社あった関連会社を700社代に減らすなどの大幅なコスト削減でした。当時、川村氏はこう発言しています。

「自分たちは普通の会社に戻っただけ。今後成長していけるかどうかはこれからのことだ」

そして、このようにも。