民事トラブルの代表格といえば、なんといっても金銭トラブル。「貸した・借りてない」「返せ・返せない」などの応酬は、お互いにとって疲弊するものです。一悶着の結果、法廷で決着をつける……ということも珍しくありません。

そのときに威力を発揮するのが、証拠となる「借用証(あるいは借用書、借用証書など)」。親しい間柄であればあるほど口約束だけで貸し借りをしがちですが、こうした書面を取り交わしをしておくことは、のちのトラブルを防ぐために(そして、万が一裁判で争わなければならなくなったときにも)非常に有効な手段と言えます。

そこで今回は「借用証」と、返済が遅れた時に取り交わす「念書」の基本的な書き方を紹介します。

 「借用証」の基礎知識

まず、借用証が「借用証である」ために必要な記載事項は9つあります。

  1. 「借用証」であることを示すための標題
  2. 借用金額
  3. 利息の取決め(後述)
  4. 返済期日(後述)
  5. 返済方法(後述)
  6. 「金銭を受領した」という事実の明記
  7. 金銭を受領した日付
  8. 借主の住所氏名(書名)・押印
  9. 貸主の氏名

このうち、少し説明が必要な3項目の詳細は次のようになります。

利息の取決め

無利息であればその旨を、利息の約束があればそれを明記する。個人間で取り交わした借用証で利息の取決めがないときは無利息とみなされる。また、利息をつける約束をしても利率を決めなかった場合は、年5%の利息とみなされる(民法第404条より/2015年5月時点)。

返済期日

「●年○月▲日」というように記載するのがベター。「×か月以内に」という期間で記載したり、メモ程度の借用証では記載しない場合もある。記載がない場合は返済期日の取決めを行なわなかったことを示すので、返済請求は貸主の自由となる。

返済方法

「貸主の住所に持参」「振り込み」など、返済方法を記載。とくに記載がなければ貸主の住所に持参することになる。

また、こうした書面で金額を書くときは、桁を増やしたり文字を書き換えるなどの改ざんを防ぐために

  • 頭に「金」とつけてから金額を書く
  • 「一→壱」「二→弐」「十→拾」「万→萬」など、画数が多い文字を使う
  • 「拾萬円」の頭に壱をつけて「壱拾萬円」と書く

などの書き方をすることが基本です。

借用証のサンプル

つぎに、借用証にはどのような形式のものがあるのかサンプルを3種見てみましょう。

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メモ書きレベルの借用証(『新版 他人に聞けない文書の書き方』P.187より)

このいかにもメモ書きのような借用証は、無利子・無期限・無担保といった、極めて簡単な条件での借用証となります。

しかし、これには先に挙げた条件の8番目にある「借主の住所」の記載がありません。そのため、正式な借用証の必要記載事項を書いている「不備のある借用証」ということになり、文字通り「メモ代わり」程度のものと言えます。