デザイナーやプランナーなどのクリエイティブ職の人はもちろんのこと、ビジネスパーソンであれば、どのような職種であってもある程度の「アイデアを出せる能力」が求められます。

とはいえ、会社や上司は「斬新で驚きに満ち溢れた、これぞ『エポックメイキング』と言えるようなものをヨロシク」などと簡単に言ってくるのでなかなか困るもの。悩んだ挙句、既存製品に毛が生えたようなものを苦し紛れに提案しても「単なる既存商品の焼き直しじゃないか。やり直し」とあっさり言われてイラッとすることに……。

そんな悩めるビジネスパーソンのあなたの助けとなる思考法があります。それが「ラテラル・シンキング」と呼ばれるものです。(※本記事に記載されている製品名は各社及び商標権者の登録商標あるいは商標です)

そもそも、ラテラル・シンキングってなに?

「ラテラル・シンキング」とは「ロジカル・シンキング」の対となる思考法で、日本では「水平思考」ともいわれています。ちなみに、ロジカル・シンキングは一般には「論理的思考」という呼び名がメジャーですが、「垂直思考」とも言われています。

これら2つの思考法の違いは、下の図のイメージで表せます。

late1
ロジカル・シンキングとラテラル・シンキングの違いイメージ (『3分でわかるラテラル・シンキングの基本』 p.59より)

ロジカル・シンキングでは、課題に対して論理的に正しいかを検証しながら、A→B→C→Dと着実なステップを踏んで思考プロセスを深めていきます。一方、ラテラル・シンキングでは、A→Gや、A→B→Yのようにまったく新しい方向に突然ジャンプする非連続の思考で答えを導きだそうとします。

これを利用して生まれたのが任天堂の「ゲーム&ウォッチ」です。ある程度の年齢の方にはピンとくるでしょうが、「何それ?」という若い方向けに簡単に説明すると、任天堂製の携帯ゲーム機の原点とも言える商品です。大雑把な系譜としては下記のようになり、当時の国内販売台数で1000万台を超えた大ヒット商品です。

1980年~80年代後半  ゲーム&ウォッチ
1989年~2000年代前半 ゲームボーイ・ゲームボーイカラー・ゲームボーイアドバンス
2004年~ ニンテンドーDS・3DS

さてこの「ゲーム&ウォッチ」、どこがラテラル・シンキングの産物なのでしょうか?

その答えは、「液晶を利用したこと」です。

当時は液晶の利用先は主に電卓くらいだったのですが、それも普及しきっており、液晶を生産していたシャープ社内では液晶の新たな転用先を探していました。一方、任天堂の横井軍平氏(故人、当時は開発第一部部長)は、新幹線の車内で電卓をたたいて暇つぶしをしている人を見て「暇つぶし用の小さなゲーム機を作れないか」と思いついたそうです。

その両者が出会うことによって「電卓用の小さな液晶」は「後に1000万台以上売れることになる小型携帯ゲーム機」に転用されることになったのです。その大ヒットは、ゲームボーイやニンテンドーDSなどの後継商品の礎となっただけではなく、「携帯ゲーム機」という新たな市場を生み出したことからも明らかといっていいでしょう。

また、「ゲーム&ウォッチ」の大ヒットに伴い、横井氏の哲学である「枯れた技術の水平思考」という言葉も、ラテラル・シンキングの特徴を表す言葉として有名なものとなりました。