日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2015/04/15 11:55
和邇駅からJR湖西線で南下し、大津京という駅で降りてみた。少し前の回にも書いたように、大津京とは、文字通りかつてここに京(みやこ)があったことを示している。
大津京駅で降りて、西北に向かって少し歩いた、京阪電鉄の近江神宮駅付近が「錦織」という地名である。この付近は古代豪族錦部氏のいたところだが、錦部氏の本拠地もやはり近江ではない。
錦織とは、古代に錦や綾を織った錦織部に由来するもので、なかでも、河内国錦部(大阪府河内長野市)を本拠地とした百済系渡来人の錦部氏が有名。本来、「錦織部」は「にしきおりべ」だったと思われるが、やがて「にしこおりべ」や「にしこりべ」となった。
さらに中央の「織」という漢字が落ちて「錦部」となる一方、読みからは末尾の「べ」が落ちため、「錦部」と書いて「にしごり」と読み、漢字と読み方が対応しなくなっている。こうした変化は、古代の「服織部(はっとりべ)」が、漢字は「服部」、読みは「はっとり」となったのと同じものだ。
錦部氏の広がりによって、「錦部」という地名は、岐阜県から岡山県にかけての各地にある。その1つが滋賀県大津市の錦織で、現在では「錦織」だが、古くは「錦部」と書かれていたことがわかっている。読み方も看板に振られたふりがなから「にしこおり」であることがわかる。