マジックワードってなんだ
次の会話は、ある会社における指導役の先輩と生意気な後輩のやりとりです。いちいち反論してくる後輩の態度に先輩は少々お冠のようで……。
後輩「どこが常識なんですか?」
先輩「そういうふうに先輩に口答えするところだ! みんな言っているぞ」
後輩「みんなって誰ですか?」
先輩「おまえの知っている奴、全員だよ」
後輩「それなら、私が直接聞いてみましょうか?」
先輩「そんなことが、本当におまえのやりたいことなのか? もっとやるべきことがあるだろう!」
もしかしたら、似たようなやりとりをあなたも職場で耳にしたことがあるかもしれません。実際に当事者としてこうしたシチュエーションを経験した方もいるのでは? 先輩、後輩の双方にそれぞれ言い分がありそうですが、あなたならどちらの肩を持つでしょうか。
実はこの会話、先輩の発言の多くは「マジック・ワード」で占められています。「常識で考えればわかるだろう!」「みんな言っているぞ」「本当におまえのやりたいことなのか?」がそれにあたります。
マジック・ワードとは、すごく意味がありそうなのによく考えるとわからなくなる、いわば思考停止を招く言葉です。先輩の言葉は力強く、一見正しい主張に思われるかもしれませんが、じっくりと聞き直してみると具体性に欠けています。
私たちはこのマジック・ワードを会議やプレゼンの場、論文やレポートの執筆などで日常的に使っているケースが多いのです。実はメディアなどでも多用されています。
そんなマジック・ワードを日常生活、会社、メディアで使われるパターンごとにまとめ、さらにその使用を避けて、「自分の考え」を論理的に伝える技術を解説するのが、『その言葉だと何も言っていないのと同じです!』(吉岡友治著)です。
あのキャスターも使ってる?マジック・ワードの代表例
本書で取り上げられているマジック・ワードの代表例を見てみましょう。
┃おもに日常生活のなかで使われるマジック・ワード
【問題解決から遠ざかる系】
「もっと議論をすべき」「悩ましい問題である」
【呪いの強調言葉系】
「みんながそう言っているよ」「本当に今必要なものでしょうか?」
【理屈より力がものをいう系】
「常識で考えればわかるだろう」「主体性を持って取り組め」
【具体性がうやむやの結論系】
「一人ひとりができることをする」「相手の身になって」
┃会社の定番用語となっているマジック・ワード
【言葉だけ先行のトレンド系】
「コミュニケーション能力」「プロ意識を持て!」
【具体的にはどうなるの?系】
「リーダーシップが必要」「組織一丸となって立ち向かう」
【危機感あおりまくり系】
「研修が必要だ」「それがやりたいことなのか?」
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